

坂東拡七郎師が主宰する坂東流京の会の第3回浴衣会「夏の舞踊祭」がこのほど、パコイマのサンファナンドバレー日系文化センターで開かれた。子どもから名取までが日頃の稽古の成果を披露し、古典を土台にしながら趣向を凝らした舞台で観客を楽しませた。米国歌舞伎研究会主催、同センター共催。
浴衣会は、華やかな本衣装ではなく、浴衣姿で踊りを披露する格式ばらない発表会。今回は長唄や端唄、民謡、舞踊小曲、大和楽など計14演目が上演された。民謡の小杉真リサさん、大和楽の大和やそよさん、鳴物の堅田喜巳扇さんを特別出演に迎え、それぞれの門下生も生演奏で舞台を支えた。
幕開けは、坂東京睦三さんによる俚奏楽「民謡七福神」。福運や繁栄、豊かな実りへの願いを込めたにぎやかな舞に続き、「京花笠」「黒田節」「京の四季」「藤娘」「藤音頭」などが披露された。12歳から14歳のタイキ・サリオくん、ダイスケ・サリオくん、コージ・シャーくんが踊った「凧奴(たこやっこ)」は、端午の節句の凧揚げを題材に、力強い動きとユーモラスな振り付けで、風を受けて空高く舞う凧の躍動感を表現した。3人は数カ月にわたり週1回の稽古を重ねたといい、「楽しく踊ることができた。これからも続けたい」と笑顔を見せた。

小杉さんが歌い、クリスティーン・イノウエさんが踊った「さのさ」では、明治から大正にかけて親しまれた流行歌をブルース調にアレンジ。かなわぬ恋に心を寄せる女性の思いを、郷愁を帯びた圧巻の歌声と舞で表した。
日系社会では太鼓奏者ウォルター・ニシナカさんとして知られる坂東京三郎さんは、「暴れ太鼓」で太鼓の経験を生かし、舞踊に太鼓演奏を取り入れる試みに挑戦した。九州・小倉を舞台に、豪快な車夫・無法松の心意気を、勇壮な太鼓の響きと躍動感あふれる舞で表現した。京三郎さんは「太鼓と舞踊を組み合わせたのは今回が初めて。今後はさらに大きな作品にも挑戦してみたい」と意欲を語った。

後半には、大和楽の「城」「あやめ」「藤むらさき」「団十郎娘」が生演奏で披露された。「団十郎娘」では坂東京春三さんと坂東京三鈴さんが、市川團十郎に夢中の「お嬢さん」と、迎えに来た丁稚(でっち)との軽妙なやり取りを演じ、会場の笑いを誘った。
最後は拡七郎師が、落語を題材にした長唄「あたま山」の春の場面を披露。さくらんぼの種を飲み込んだ男の頭に桜の木が生え、花見客が押し寄せる奇想天外な物語を、多彩な人物を踊り分けながら軽妙に演じた。
拡七郎師は「伝統的な日本文化を学ぶ人が少なくなっている中、さまざまな分野の人たちが集まり、力を合わせて盛り上げてくれることが本当にありがたい」と感謝を表した。また、伝統を守りながら新しい表現を生み出し、次世代へつなぐ舞台を披露したことについて、「古典を土台として基礎をしっかり固めているからこそ、自由な表現や遊びを取り入れることができる」と話した。

拡七郎師はまた、10月24日(土)、25日(日)にサンマリノのハンティントン・ライブラリーで開く自身の公演にも触れ、十代目坂東三津五郎の長女、坂東奈央さんを迎え、「団子売」や、自身が振り付けた「松竹梅」などを披露する予定だと明らかにした。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)日本演劇研究教授の嶋崎聡子博士をナビゲーターに、歌舞伎と日本舞踊の魅力を紹介する公演で、箏や三味線、唄など約10人の地方が生演奏を担い、大曲の「鏡獅子」にも挑戦するという。 (長井智子、写真も)


