
山﨑新会頭(左端)を筆頭に新役員が壇上で職務の全うを誓う。右端が竹花前 会頭

南加日系商工会議所(南加日商)は、120周年の節目を締めくくり、新体制の下、新たな一歩を踏み出した。このほど、モンテベロで行われた役員就任式では、退任した竹花晴夫会頭の後任にジェフ山﨑新会頭が就任。功労者への表彰とともに、次世代を担う若者や団体の存在が改めて紹介され、日系社会の「これから」を象徴する一日となった。
竹花前会頭は通算5年間にわたり会を率い、昨年は創立120周年記念事業を成功に導いた。数々の困難を乗り越えて叙勲祝賀会や総領事歓迎レセプション、コミュニティー支援など、商工の枠を超えた役割を果たしてきた。退任のあいさつでは、組織を地域にとって欠かせない存在として維持する責任を強調。今後はアドバイザーとして引き続き会を支える。

バトンを受け取った山﨑新会頭の任期は1年。2度目の就任となる。前回は「目の前の業務に追われ、新規会員の勧誘まで手が回らなかった」と振り返る。現在の会員数は約150人だが、実態整理と基盤固めが急務だという。「入ってくださいと言うだけではなく、入って良かったと思ってもらえる価値をつくる必要がある」と語る。商工会議所の原点はビジネス支援だが、120年の歴史の中で、文化行事や叙勲祝賀、外交関連行事など、日系社会の結節点としての役割も担ってきた。新体制ではその伝統を守りつつ、若い世代や新規渡米者との接点強化を図る方針だ。「アメリカンドリームを持って来られる方と一緒に活動し、少しでも役に立てれば」と話す。
奉仕世代と模索する世代
役員就任式では、ニッケイ・スピリット賞としてキース・イナトミさんを表彰した。

イナトミさんは航空宇宙業界で活躍する一方、30年以上にわたり日系オプティミストクラブ、イーストサンゲーブルバレー日系コミュニティーセンター、二世週祭財団などの日系団体で奉仕を続けてきた。その理由について、「いつかロッキングチェアに座って『何もしなかった』とは言いたくなかったから」と語った。賞は自分のものではなく、先人世代のものだと述べ、「われわれの前に道を切り開いてくれた世代に代わって受け取る」と謙虚に述べた。
また、次世代育成団体「キズナ」がコミュニティー団体として表彰された。2011年設立以来、日系米国人の歴史と文化を軸に、サマーキャンプ、リーダーシッププログラム、インターンシップ、理事フェローシップまで一貫した育成パイプラインを構築し、これまでに1万1千人以上が参加している。

あいさつに立った高校最終学年のメイソン・アサクラさんは、「自分は日本人なのか、米国人なのか、それともその間なのか分からなかったが、キズナとの出会いが転機になった」と述べ、「文化を誇りに思えるようになった。社会正義やコミュニティーへの責任も学んだ」と語った。「キズナの最大の魅力はコミュニティー」と強調し、「ここで出会った仲間はかけがえのない存在。小東京を歩けば必ず知っている人に会える。それは特別なこと」と述べた。サマーキャンプで目を輝かせる子どもたちの姿が忘れられないとし、「『ずっとキズナと日系コミュニティーの一員でいたい』と言われた時、未来への希望を感じた」と振り返った。文化に誇りを持ち、コミュニティーを大切にする若い世代が育っていると述べ、キズナを支援してきた南加日商に感謝を示した。
キズナのエグゼクティブ・ディレクター、クリス・フィッツジェラルドさんは羅府新報の取材に対し、自身は日系ではないが青少年育成の視点から関わっていると説明。「若者はどの文化でも、ある時期に自分のアイデンティティーを定義しようとする。キズナはその発見を支える存在でありたい」と述べた。キズナは7歳から27歳までの若者が関われる活動を展開しており、サマーキャンプには米国生まれの子どもたちだけでなく、日本からの駐在員子女など短期滞在の子どもたちにも参加してほしいとしている。また、若者を地域団体や小規模ビジネスに紹介するインターン事業を行い、世代をつなぐ試みを続けている。

役員就任式に続く新年会では会員が和やかに談笑して親睦を深めた。エンターテインメントでは南加日商の副会頭で、実業家でありながら76歳でプロ歌手として日本の歌謡界にデビューした藤本章さんがマイクを持った。
120年という歴史の上に立つ南加日商にとって、未来は単なる延長線ではない。奉仕の精神を原動力とする世代の経験と、自分を見つけようとする若者の歩み。その接点をどう広げ、理念を次代へつなぐかが焦点となりそうだ。 若者が「自分は何者か」と問い続けるように、地域社会に関わる大人たちもまた、「どのような大人でありたいか」という問いに向き合う時がある。「何もしなかったとは言いたくない」という言葉は、その静かな内省の表れともいえる。それは地域社会に根を張った人々の実感とも重なる。(長井智子、写真も)
