
トーレンスにあるホテル「ダブルツリー・バイ・ヒルトン・トーレンス・サウスベイ」の建物にドジャースの大谷翔平、山本由伸、佐々木朗希の3選手をモデルにした壁画が完成し24日、除幕式が開かれ参加者約500人が新たなランドマークの誕生を祝った。「サムライ・オブ・ザ・ダイアモンド」と名付けた壁画の作者ロバート・バーガスさんは、「この壁画を通じ日米を結ぶ文化の架け橋を築くことができればいい」と思いを語った。両国の友好の象徴として期待が寄せられる。

壁画の制作は毎日、午前8時から始め日没まで続いた。連日の猛暑から一変した冷え込みや、高所での作業に影響を与える強風に悩まされたりしたが12日間で仕上げた。12階建てのホテルはトーレンス市の目抜き通りで、1日に数万台の車の交通量があるホーソン大通りに面し、この立地条件の良さと、壁画の大きさ(高さ130フィート×幅50フィート)から作品は目立つことから、見学に訪れる人が多い。バーガスさんは制作の休憩中に「素晴らしい作品だ」「トーレンスにドジャースの壁画を描いてくれてファンとして感謝したい」、日本人からは「ロバートさん、頑張って」などと励ましの声をかけられたり、創作に関する質問に答えるなど触れ合いを楽しんだ。
バーガスさんは壁画アーティストとして有名で、米国と欧州各地作品を発表しており、大谷選手の壁画は小東京と日本で3作品手がけた実績を持つ。今回の作品制作は、壁の表面が平坦ではなく、数百もの溝が上下に走っていることから描画は極めて困難だったという。「これまで制作した大作の壁画と比べると、時間と労力、忍耐力、塗料をより必要とし、最も大変だった。だが、チャレンジする毎日でやりがいがあった」と、完成までの時間との闘いを振り返り、安堵の表情を見せた。

トーレンスを選んだ理由について、「2年前に小東京に大谷選手の壁画を描いたが、小東京と日系米国人社会が大谷選手のドジャース加入を歓迎し、活躍を祈って応援した。それと同様に今回は、大谷、山本、佐々木の日本人生まれの3人のヒーローがトーレンス市民とトーレンスの大きな日系米国人コミュニティーに愛されることを願って決めた」と説明した。さらに「われわれのこの壁画の存在が日本にも伝わり、日米の友好関係に役立ち、良い影響を与えることができればうれしい」と願う。トーレンス市が大谷選手の出身地の岩手県奥州市と、山本選手の出身地の岡山県備前市と友好都市提携を結んでいることに関し、「私は奥州市民から依頼を受け、現地で大谷選手の壁画を描いたことがあるので、今回の作品はトーレンス市とこれら2都市の真の友好関係を表していると思う。日米の友好都市の絆を強めることができ誇りに感じる」と胸を張る。
式典前日は徹夜で作業を続け、完成させたのは式典開始の3時間前だったという。万雷の拍手を浴びあいさつに立ったヒーローは、壁画について「われわれを新たな時代、新たな局面、新たな可能性に導く。壁画の中の日本から来た3選手は偉大で、ドジャースのみならず、AAPIと日系米国人の人口が多いこの地元コミュニティー、そして米国家に貢献を果たしている」とたたえた。

壁画はドジャースのチームカラーのブルーシートで覆われ除幕を待った。「ロサンゼルス太鼓コレクティブ」の代表ウォルター・ニシナカさんが演奏する中、バーガスさんの音頭で参加者が10秒のカウントダウンを終えると、紙吹雪が舞い作品がお披露目となった。熱狂した参加者は歓声を上げながら、ドジャースのワールドシリーズ3連覇を祈り「スリーピート」を連呼。スマートフォンでQRコードをスキャンし壁画を映すと、上から佐々木選手、山本選手、大谷選手の順に、それぞれの投球モーションが動画で映し出される。参加者は早速試し、3投手の投球動作を見て球場さながらの興奮に浸った。
トーレンスのジョージ・チェン市長は壁画について、「トーレンス市に誕生した最大のドジャースの壁画だ。大谷と山本の出身地と友好都市提携を結んでいるので、トーレンス市にとってはぴったりの作品になりうれしい。この壁画の3選手は、皆が尊敬しロールモデルとする国際的なスーパースターなので、トーレンス市と友好関係の2都市のみならず日本全体との友好を象徴している」と述べた。さらに、「バーガスさんは、奥州市との締結の調印式に立ち会ってくれた」と強調し、今後はジョン・カジ市議と共に佐々木投手の出身地の岩手県陸前高田市との友好都市の締結に意欲を示した。

壁画の設置で新たな名所となったホテルのオーナーのアンドレ・クーさんは、台湾出身で日本人の母親を持ち、自身は8年間東京で暮らしたため流ちょうな日本語を話す。ロバートさんに出会ったのは2年前で、トーレンス市のチェン市長から紹介された。「トーレンス市と地元のコミュニティーのために懸命に働く信頼できるチェン市長の紹介だったので会うことにした。バーガスさんは、壁画に最も適したキャンバスを探していた。説明を聞いて大きな壁画を描く情熱とビジョンを持っていて、トーレンスに新たな特別なものをもたらしてくれると期待し、任せることにした。トーレンスは日本人の住民が多いので、日本人3選手を題材にしたアイデアもとても気に入った」と振り返った。
バーガスさんに案内され、大谷の顔の絵をすぐそばで見たが、「凸凹の表面に描くことは、極めて困難なことだと分かった。左右、上下のあらゆる方向から見ても3人の選手を立体アートのように完璧に描いたバーガスさんの才能に驚く。困難な制作環境を克服する天才で、熟練した真のアーティストだ」と称賛。作品の完成後にクーさんは壁画の右隅に自身の氏名をサインしたが、慣れない筆で署名するのは難しかったという。ホテルは約30年前に購入し、12年前に他界した前オーナーの父親の思い出が詰まっており「父がこの壁画を見たら感動して喜んだことだろう。見せたかった」と、しみじみと語った。(永田潤、写真も)


