今年、梅雨明けの日本は本当に暑かった。テレビは朝から、「用事のない限り屋外に出ないように。命を守るために部屋には冷房を入れ、こまめに水分を摂るように」と繰り返していた。
そんな中をある日、私が帰省中であることを知った友人2人が実家に訪ねて来てくれた。「久しぶりに会いたいね」との声に、「母の介護で家を空けることはできないけれど、来てもらうのは大歓迎」と食事を準備。法学部に在籍した女子学生7人のうちの3人が集うという、ミニ同窓会となった。北九州市在住の友人は裁判所の調停委員として、福岡市在住の友人は弁護士として、長く地域に貢献してきた女性たちだ。
そのうちの1人、辻本育子さんは、「日本初のセクハラ(セクシャルハラスメント)訴訟」と注目された裁判の原告代理人を務めた。バリバリ仕事する女性を疎ましく思い始めた上司が、性的誹謗(ひぼう)中傷を続けて、女性を退職に追い込んだケース。女性の訴えに、名誉毀損では立証困難な面があると判断し、正面からセクハラによる不法行為として上司と会社を相手に訴訟を提起。1992年に全面勝訴を克ちとった。その後97年の男女雇用機会均等法には、事業者はセクハラ防止のために配慮する義務のあることが明記された。
3児の子育てをしつつ勝訴を目指して超多忙の時を送った彼女の日々は、六価クロム溶液垂れ流しの巨大企業から全米史上最大の公害賠償金を勝ち取った映画「エリン・ブロコビッチ」(主演ジュリア・ロバーツ、2000年)を思い出させる。そして、エリン・ブロコビッチが実話の映画化であるように、30年以上前の育子さんの活躍もこのほど映画となった。タイトルは「ファーストボイス 私たちの逆転裁判」。弁護士役を綾瀬はるか、原告役をファーストサマーウイカ、女性事務員を松本穂香という、朝ドラや大河ドラマでも馴染みの頼もしい顔ぶれがそろった。
アカデミー主演女優賞を獲得したジュリア・ロバーツの演技が全米の人々の心をつかんだように、「ファーストボイス」もまた、日本で多くの人に支持されることを願っている。封切りは10月2日。(楠瀬明子)
