予期せぬ緊急事態が発生した際、一体何人の人が落ち着いて「911」のディスパッチャーに必要な情報を伝えられるだろうか—。
 自宅に1人でいる時に突然発作に襲われた場合、何とか911をダイヤルできたとしても、その苦しさから会話ができずディスパッチャーに状況を説明できないかもしれない。
 火災発生の場合、着の身着のままで焼け出され、自身もけがを負う中、室内に残された家族やペットの存在、ベッドルームの場所などきちんと伝えることができるだろうか。
 身体的、精神的に大きな被害を受けた後など、第2言語である英語がなかなか出てこないことや、携帯の充電が残り少なく途中で切れてしまうなど、状況によってはその一分一秒が命取りになることもある。
 このような問題を解消し、一刻も早くレスキューを送れるよう、カルバーシティーは向こう3年間で2万5000ドルをかけた新システム「スマート911」を導入した。
 同システムは、持病やアレルギー、ベッドルームの位置、希望言語、ペットの存在などといった細かな情報を、携帯や固定電話の番号とともに前もって市に登録しておくことで、登録した番号から911に電話するとこれらの情報がディスパッチャーの画面に表示されるというもの。
 これにより、何らかの事情で言葉を発することができずとも、ディスパッチャーは表示された情報をもとに速やかにレスキューを向かわせることができる。また同データベースは全米規模のため、前もって登録した携帯電話から連絡することで、他州からでも同情報がディスパッチャーの画面に表示される仕組みになっている。
 現在、全米29州350市制機関で導入されており、加州ではカルバーシティーが初。ロサンゼルス市も導入を検討しており、近いうちに入札を行う予定としている。
 「プライバシーの侵害」との批判もあるが、登録は住民の自由。速やかなレスキューとプライバシーの保護、どちらを選びますか。【中村良子】

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