いわゆるオーディオ機器がでてくる少し前の60年代半ば、当時の物心のついた子供たち同様にスピーカーがひとつだけの電蓄、ステレオ装置以前のレコードプレーヤーでビートルズやストーンズの同じ曲を何度も繰返して聴いていた。
 大学を卒業して入った広告代理店の顧客の多くがパイオニア、ヤマハ、TDKといったオーディオメーカーだった。
 そこで初めてJBL4343、マッキントッシュのアンプやシュア・タイプⅢのコンポーネントオーディオの再生音を体験。聴きなれた曲の次元の違った音に新鮮な驚きを覚え、一気にオーディオの世界に引きずり込まれた。
 2009年7月にLAのディズニーホールで日米友好を目的に集められた第九のコーラスに参加した。
 ステージ上で聞くオーケストラの奏でる音は録音された音とは違う。目と鼻の先でいろいろな楽器の生の音が聞ける。室内楽を小さな場所で鑑賞するなどの場合を除き、通常コンサートなどで聞こえてくる音は何らかの音響システムを通して聞く場合が多い。
 オーディオマニアの目指す音の目的の一つが録音時の音の再生ということであれば、実際の楽器の音自体を知る必要があるだろう。舞台でオーケストラと共演すると、歌う楽しさ以外に、いろいろな楽器に囲まれその生の音を体験できる楽しさもある。
 9月9日に発売のビートルズ・モノLPリイシュは大いに期待できそうだ。2009年に出たステレオLPリイシュは聞いていないが、ステレオ、モノ共にCDはそれなりに楽しめた。
 ほぼ同時発売になったステレオLPに関しては不評が多く、今回のモノLPは当時のテープレコーダーを使い、当時の担当技術者が起用される。行程のほぼすべてがアナログ・マスターリングで、オリジナルUKLPを超える音を目指してロンドンEMIスタジオで行われた。
 装丁はUKオリジナル盤に限りなく近い体裁でその仕上がりが楽しみだ。マスターテープの経年劣化がどの程度あるかは不明だが、eBayなどで数百ドルもするオリジナル盤を買い替えていくよりはこちらのほうが賢い選択になるのではないだろうか。【清水一路】

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