長土居さんが著した「ネオ昭和青春ノベル・シリーズ」の全5巻
長土居さんが著した「ネオ昭和青春ノベル・シリーズ」の全5巻
 本紙「磁針」のコラムニストとしてお馴染みで、映画監督、脚本そして、役者もこなす長土居政史さんがこのほど、電子書籍「ネオ昭和青春ノベル・シリーズ」(知玄舎)を出版した。作品は、読み切り短編小説の全5シリーズ10話からなり、懐かしい昭和の温もりが感じられる。

長土居政史さん
長土居政史さん
 長土居さんは、高度経済成長期真っ直中の東京下町で生まれ、東京郊外で育った。1980年代初期に憧れた米国への大学留学を果たし、卒業後は数年間、米国で働いた。経験を積み、バブル時代の日本に帰国し再就職するつもりでいたが、時代の変化もありとどまることに。在留生活は30年が過ぎた。人生は半世紀がたち時折、日本での少年時代や感受性の強かった青年時代の思い出が、鮮明な映像として脳裏に再現されるという。
 華麗な満開の桜や活気ある町の雑踏、温もりある家族の団らん、限りなく明るい希望…。色、音、匂いさえも感じ、無意識のうちに、古き良き日本の感傷に浸る時、昭和の真心の大切さを深く感じて生きてきた世代だとつくづく思うという。
 長土居さんは、戦後の復興期を日本で過ごし渡米した日本人に向け、自著を通して「ふっと懐かしんで、ほっと癒されて、くすっと微笑んで、少しばかりの熱い思いや感動を感じてもらえれば幸い。何かしらエネルギーの糧になったらうれしい」と願っている。
 同書購入のウエブサイト―
 www.nagadoifilms.com/short-novel-series.html
 
 ▽シリーズ1「アップルグリーンのソックス」
 田舎っぽさが残る東京郊外に住むヒロシは小柄な熱血野球少年。草野球を卒業し、誰もが憧れる地元のリトルリーグ・チームに入団するのが夢だ。信頼していた仲間の裏切り、新たな友情、強い絆の家族愛を通して、ヒロシは本当に大切なものは何かを自覚し始める。少年が少し大人へ近づく成長物語。
 ▽シリーズ2「バッキングアップ」
 高校生のやんちゃな竜太は、チーム強化のため、おとなしくて背の高い時男をラグビー部に勧誘する。だが、なかなか話に乗らない時男には理由があった。家庭の事情と別のスポーツ、剣道の存在だった。いじめがはびこる学校生活の中で、男の真の友情が芽生える熱血学園ドラマ。
 ▽シリーズ3「とりのこ族」
 自由でのん気なフリーター仲間3人組は、東大を目指す浪人生サンタを説得してテレビのクイズ番組で海外旅行と賞金獲得を目指す。決勝戦まで進み、夢が叶う寸前まできたが…。バブル直前の楽観的な時代を背景に競争社会を皮肉ったドタバタ青春コメディー。
 ▽シリーズ4「親父のおにぎり」(全3話)
 「親父のおにぎり」―33歳独身の俊司は、ロサンゼルスに駐在する商社マン。やっと住み慣れてきた地元ウエストLAは、元々日系移民街であり今では日本式の居酒屋も並ぶ。店で出てくる大きいおにぎりを見ると、父親と2人暮らしだった小学生の頃を思い出す。父親を慕う甘く切ない物語。
 「新造先生と論文」―中学校の論文コンテストで、特殊な視点で書いた作品を発表する秀敏。テーマは公害問題。担任の新造先生から呼び出され、書き直しを説得される。正直な内容がなぜダメなのかが理解できない秀敏。しかし先生と生徒の関係は、思いもがけない展開に…。自分探しの少年秀敏の成長物語。
 「記憶の裏側」―母親が倒れ、留学先のアメリカから一時帰国する稔は、思いがけなく昔の仲間や、別れた彼女と再会を果たす。日本を去るきっかけになった出来事を思い出しながら、未熟だった5年前の自分を振り返る。1度は消そうとした過去の記憶が、新たな形で蘇る。若者が抱える恋愛苦悩青春ドラマ。
 ▽シリーズ5「フェニックス・カフェ」(全4話)
 「セシールの椅子」―幼い頃からエリート教育を受けた陽治は、思いがけなくも大学受験に失敗する。彼女にもふられ、家族からも見離され、独り暮らしとアルバイトを始める。絶望感が深まる中、唯一の心のよりどころは、陽治がスポンサーになったハイチの少女セシールの存在と、彼女が描いた椅子の絵だった。感受性の強い若者による究極の苦悩感情ドラマ。
 「マメロ」―アメリカ・ミネソタ州の留学先で出会った友達、南アフリカ出身のマメロ。政治、社会、人種問題を共に考え、悩み、自分自身のアイデンティティーを見つけようと理想主義に燃えた留学生たちの友情学園物語。
 「衝撃の判決」―ロサンゼルスに出張中の良人は、長い1日の業務を終え、夜遅くダウンタウンのホテルの部屋に戻る。テレビをつけると殺人事件にまで展開した残酷な児童虐待事件のニュースが報道される。裁判は納得しがたい判決に。社会の矛盾に怒りを覚えると同時に、自分の生存価値を再検証する良人。実存主義的自己再考ドラマ。
 「フェニックス・カフェ」―アメリカ・ミネソタ州の留学時代のストーリー。健司は友達のリックに誘われベトナム料理のレストランへ出かける。昼食中リックが、ベトナム戦争後、難民を受け入れたミネソタの歴史などを教えてくれる。健司にとっては、おいしい料理を味わうだけでなく、アメリカ社会を垣間見られた貴重な体験となった。社会派学園ドラマ。

Leave a comment

Your email address will not be published. Required fields are marked *