1980年代初期、血友病患者を多数含む、約2000人がエイズで死亡。当時、すでに安全性の高い熱処理された血液製剤が存在していたにもかかわらず、米国企業が日本に非加熱の汚染血液を販売し、安価な非加熱製剤を日本製薬会社が入手、配布し続けたことが原因であった。スキャンダルは、薬品会社、そしてその規制責任を怠った日本政府に対する市民の怒りを引き起こし、厚生省の高官、関連した薬品製造会社幹部や血友病分野の主要医師が告発され、裁判は10年以上にもおよんだ。
脚本・演出は、全米監督協会賞を獲得し、ゴールデングローブ賞2度、エミー賞に5度ノミネートされるなどの輝かしい実績を持つ舞台・映画界の巨匠、ロバート・アラン・アッカーマン氏が手掛ける。
東京に約20年在住したアッカーマン氏は「この裁判が長引いた理由の1つは、被害者やその家族が身元を公表したがらなかったからだろう」と語る。当時の日本では、エイズという病気を持つのは、たいへんな恥と思われていたとし、訴訟が裁判に取り上げられた時も、原告はみな、黒いカーテンの後ろに姿を隠して証言したという。
若い青年だった原告がついに10年の沈黙を破り、初めて実名を公表した。その川田龍平氏は奇跡的に生存し続け現在、参議院議員として活躍している。川田議員は、この舞台についてメッセージを寄せ「95年の当時まだ19歳だった私は、2度と同じ苦しみを人々に味合わせたくないという思いから、薬害エイズ被害者として実名公表し、国と製薬企業を相手に闘った」と振り返る。「20年以上たった今、海の向こうの米国で、この事件から生まれた舞台が公演されることを、本当にうれしく思う」
アッカーマン氏は、実際の出来事にフィクションを融合させ、さらに音楽を織り込んで、この舞台を劇的でユニークな作品へと昇華させた。当初、福島の原発事故に触発された同氏だが、昨年12月、血液製剤や各種ワクチンの日本のトップメーカーである化血研が、薬害エイズ事件後も約40年間にわたり、違法薬品製造、資料の改ざん、会社ぐるみで隠蔽工作を続けていたことが発覚したことから、この舞台の公演の必要性を感じたという。南カリフォルニアのポーター・ランチでのメタンガス漏れや、ミシガン州フリントの飲料水に鉛が検出されたことなど、数々の身近な出来事に潜む大きな緊急性に、この舞台を通して光が当たることを願い、渾身の力を込め作品を仕上げた。
BLOOD は、4月3日までの週末に公演される。開演時間は金、土曜が午後8時、日曜は午後3時。チケットは、金、土曜が30ドル、日曜は25ドル。
チケット購入は、電話323・960・7745。メール—
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