野球の神様と崇められるベーブ・ルース。日本から海を渡り、春のキャンプで米メディアに「日本のベーブ・ルース」と例えられたのは、お腹の出たズングリとした体でもブルドッグのような愛嬌のある顔でもない。193センチという日本人離れしたスラッとした体型と、端整な顔立ちは似ても似つかない。その選手は、ルース以来約100年ぶりに本格的な投打の二刀流で鳴らす大谷だ。
 ルースといえば、元巨人の王さんがルースの本塁打記録を破った際に初めて知った人も多いことだろう。逆に投手と掛け持ちしていたことを知る人は少なく、大谷の活躍でそのことを知った人は多い。
 野球博物館の動画で、ルースの投球を見たことを思い出した。野手には投げることができない鋭い変化球と制球を持っていて驚いた。大昔と今を比べるのは無理があるものの、その頃は球速の記録はないが、速球は今よりも遅く、変化球はカーブくらいしかなかったのではないだろうか。だが今は5、6種類の変化球に100マイルの剛速球の時代。それを投げては2桁三振を奪い、打っては落差のある打ちづらいチェンジアップをホームランにしてしまうのが大谷のすごさだ。
 キャンプでは投打ともに調子が上がらず、米メディアは「日本のベーブ・ルース」を懐疑的に伝えていたようで、ファンも半信半疑だった。だが、開幕戦は先発DHでメジャー初打席の初球を狙いすましヒット。地元開幕からは、3戦連続ホームラン。マウンドは、初登板初勝利、地元初登板でも完全試合を期待させる快投を演じて2連勝を飾った。
 ア・リーグ週間MVPに輝く大活躍に米メディアは手のひらを返し絶賛、地元ファンは活躍のたびに総立ちのオベーション。開幕前は不安だったわれわれ日本人ファンは、日本の野球が侮られることなく、ホッとしていることだろう。
 ルースのように1シーズンで2桁勝利、2桁ホームランを記録すれば、二刀流大谷の真価は高まるだろう。性格のいいイケメン和製ベーブ・ルースの活躍に、ファンは夢を膨らませる。【永田 潤】

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