今回の調査は日系人を世代数や他国人との混血の有無にかかわらず「海外に移住した日本人及びその子孫」と定義し、南米・北米・アジア・欧州・豪州に住む18〜35歳の若者を中心とした3800人にオンラインアンケートを実施した。また、12都市で10人前後のフォーカスグループによる座談会を行った。調査項目として「日系人の重要な価値観」「文化的要素」日系人同士のつながり」などに焦点を当てた。 今までこのような世界規模の意識調査が実施されたことはなかった。
「少し」以上の日本語を話せる若者は64%で、 日本語能力は年配者よりも劣るが、73%が日本語力向上への強い学習意欲を示した。80%の若者が少なくとも週に1〜2回以上は和食または日本食風の食事をしていると回答した。重要なお祝いやお祭りの質問では花見、七夕、お盆、お祭り、新年会、忘年会といった他の選択肢を抑えて、年代地域を問わず「正月」を挙げる人が群を抜いて多かった。
若手の日系人はSNS(64%)、Web(53%)、集会(53%)、カンファレンス(47%)を通じて「世界中の日系人とつながりたい」と答え、他国の日系人との連携強化にも興味を示している姿が明らかになった。「興味がない」と答えたのはわずか10%だった。
「地元の日系コミュニティーに感じるつながり」については「強い(46%)」と「適度(27%)」を合わせて73%が肯定的だが、回答には地域差が見られ、北米、南米、アジアが高いのに対して欧州とオセアニアは低めだった。
「母国(居住国)とのつながり」については「強い(71%)」と「平均的(22%)」を合わせて93%が母国につながりを感じている。この割合は北米では96%だった。
これまで、若い世代は日系人としての意識が希薄化し現地化すると言われてきたが、この調査からは回答者の多くが日系人として強いアイデンティティーを確立し、現地社会だけでなく日本にも強いつながりを感じ、また他国に住む日系人とのつながりを求めるなど、現代社会において多様化する新たな日系人像が明らかになった。
記者会見中、「米国では戦時中の強制収容を経験した日系人がその後日本と距離を置いた時代があったが、若い世代は自国内のマイノリティーとして、アイデンティティーを確かめたいという意識があるようだ」との興味深いコメントがあった。
今回の調査の対象に表れない、日本人の血を引くものの代を重ね日系人としての意識を全く持たない人々も実際には多くいると思うが、「日系人」を「喚起」できるかどうかは日本人や日系人と名乗ることが「誇らしい」ことであり続けると事がまず大事だと、この調査を通じて改めて感じた。