生きていれば80歳、12月8日はジョン・レノンの命日。1940年に生まれ40歳で他界したのが1980年と覚えやすい。それでいろいろな記事が雑誌やウェブサイトをにぎわせ、催事も開かれている。
一昨年ジョン・レノンの故郷リバプールで開催された展示会「ダブル・ファンタジー」が来年1月まで東京で開かれている。ビートルズ後の生活、活動、遺品などが展示され、のぞいてみたいが2週間の待機を経なければ入国できない現状では見送らざるを得ない。
生誕80年に一つうれしいプレゼントが用意された。「GIMME SOME TRUTH」というベスト盤だ。今まで各アルバムやベスト盤が幾度か再発リマスターされてきたが、今回はマルチトラックまで遡り再度ミックスをし直して、マスターリングまでの全行程がアナログとのこと。小野洋子が監修、息子のショーン・レノンが制作を手掛けた。自身がミュージシャンであるショーン・レノンがマスターリングまで指揮したことが功を奏したようで、つぼを押さえた秀逸な音に仕上がり、今まで聞いたことのないジョン・レノンが聞ける。
70年代初頭の録音に共通するモコモコした音の楽曲はすりガラスが除かれたようにすっきりして、ジョンが眼前で演奏しているように聞こえるほど鮮明。他界する直前に出たアルバム、ダブル・ファンタジーからの曲は息をのむほどみずみずしい。音質やミックスが変わったことで聞き慣れたヒット曲では今ひとつ高揚感、パンチが感じられないと感じる人も多いだろう。
また万人を満足させる選曲もむずかしい。今回も「あの曲は?」と思い当たる曲が抜けている。ビートルズ解散後の最初のソロアルバムの巻頭曲、シングルでも発売され強烈なインパクトを与えた「マザー」。さらにこれもシングルとして発売ヒットした「女は世界の奴隷か!」が漏れている。後者の英語名にはNワードが含まれていることもあり選ばれなかったのかもしれないが、「マザー」に関してはふに落ちない。
いずれにしてもジョンの80歳を祝って、ショーン・レノンと小野洋子から贈られたすてきなバースデープレゼントにはちがいない。【清水一路】