没後40年以上を経た現在も世界中に熱狂的ファンを持ち、レコード(カセット、CD、デジタルを含む)総売り上げが推定10億枚以上に達する、「ロックンロールの王様」エルヴィス・プレスリー(1935〜77)。その彫像は世界各地にありますが、エルヴィス・プレスリー財団公認のものは、3体のみだそうです。ミュージシャンとして活動を始めたメンフィス、1973年1月14日に日本を含む40か国以上に衛星生中継された「アロハ・フロム・ハワイ」コンサートの地であるハワイと、もう1体は意外や意外、神戸にあります。

 と言っても、最初から神戸に建てられたわけではありません。プレスリーの死後10年目の1987年にファンクラブが広く呼び掛けて、当時国会議員だった小泉純一郎さん、歌手で作曲家の平尾昌晃さん、歌手の和田アキ子さん、西城秀樹さん、ジョン・ボンジョヴィさん、音楽評論家で作詞家の湯川れい子さんなどからの寄付も得て、ラフォーレ原宿前に建てられ、その後竹下通りのプレスリー専門店「ラヴ・ミー・テンダー」前に移設。ところが、諸般の事情により2009年1月に閉店を余儀なくされ、惜しまれながら銅像も撤去されることに。一時期は倉庫に入っていたのですが、上記の湯川れい子さんと井戸俊三兵庫県知事との縁で、矢田立郎神戸市長(当時)の協力もあり、神戸への移設が決まりました。「日本にジャズなどアメリカ音楽が最初に入ってきたのは、横浜や横須賀よりも神戸が先だったのだから」という井戸知事の言葉で、行き場を失っていたプレスリーの銅像が救われたのです。
 では、神戸のどこにするか? 当初は、港町神戸のイメージが最もよく表れ歴史もあるメリケンパークも候補にあったそうですが、すでにそこには数々の像があり、せっかくプレスリー像を置いても埋もれてしまうかもという意見もあって、それは廃案になりました。そこで、今から約30年前にJR神戸駅南側を再開発してできた新しい大型商業施設で観光地ともなっている神戸ハーバーランドに白羽の矢が立ちました。当時の担当者は、1995年の阪神・淡路大震災後に落ちた客足が戻りつつあったハーバーランドは、一時期人気が落ちてその後復活したプレスリーと重なるイメージがあった、と言っています。なるほどね。
 2009年8月7日の除幕式には、湯川れい子さん、小泉純一郎元総理が出席し、全国から熱心なファンも集まりました。以来、神戸ハーバーランドガス燈通り沿いの「カルメニ」前にあるエルヴィス・プレスリー像は、ファンの聖地となり、毎年のように、1月8日の誕生日には「生誕祭」、8月16日の命日には「ペンライト・ヴィジル」、その他の各種フェスティバルなども行われてきました。昨年来のパンデミックの影響で、それらはキャンセルになりましたが、プレスリー像は今、その近くのショップオーナーから贈られたマスクをして、パンデミックの終息を待っています。
 いやぁ、それにしても世界でも3体しかない公式プレスリー像が、私の地元、神戸にあったとは、知りませんでした。次回に帰省した時には、必ず見に行かなくっちゃ!

おがわ・ひろこ
神戸大学教育学部音楽科卒、同大学院修士課程修了。声楽、器楽、合唱、バレエなどのピアノ伴奏者、および合唱指導者。現在、南加日系合唱連盟会長。ミュージック・ペンクラブ・ジャパン会員。

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