ラジオ放送で人種差別的な寸劇を演じて1週間の無給停職処分となったティム・コンウェイ・Jr氏
 マスメディアにおけるアジア系米国人を公正に描写・報道することを提唱しているメディア・アクション・ネットワーク・フォー・アジアン・アメリカン(MANAA)はこのほど、ロサンゼルスのラジオ局KFI・AMで長年にわたりトークショーのホストを務めるティム・コンウェイ・Jr氏と、同局プロデューサーのシェロン・ベリオ氏が、5月3日の放送で、日系米国人のアクセントをまねたり、武術の効果音を入れたりする寸劇を制作したことに抗議した。これを受けて、2人は1週間の無給停職処分となった。

 MANAAによると、同日8時台の冒頭で、ベリオ氏は「サカモトユウコ」に扮(ふん)し登場。4分半の寸劇で、「ハイヤー!」といった武術の掛け声をはじめ、ドラの音、俳句、そして「もしもし」「スバルの提供でお送りします(Brought to you by Subaru)」という言葉など11種類を連呼したという。この寸劇は、コンウェイ氏と共演者らが話している間とCMをはさみ8分以上も続いた(実際に放送された内容— www.youtube.com/watch?v=-GMaXdepLqI
 放送を聴いていた番組の長年のファンがMANAAに連絡し、最終的に連邦通信委員会(FCC=Federal Communications Commission)に苦情を申し立てた。ファンがコンウェイ氏にもメールを送ったところ「アジア系米国人を攻撃しているのではなく、禅の言葉や俳句で知られるスポーツラジオパーソナリティーの『ブリック』ことビック・ジェイコブス氏の物まねである。彼の妻の名前がたまたまユウコだった。彼女の名前がジェーン・ウェルズであっても、同じような物まねになっていただろう」と返信があったという。
 MANAAの創設者および会長のガイ・アオキ氏は、「創設から29年が経つが、ロサンゼルスのラジオ局において、今まで聴いた中で最悪のパロディの一つだ」とコメントしており、ユウコさんとベリオ氏は、これまでにも面識があり、ベリオ氏がユウコさんの英語にアクセントがないことを分かっていたと知ってショックを受けたという。ユウコさんは東京生まれで、生後2カ月半から南カリフォルニアで育ち、8歳で帰化している。アオキ氏によると、ユウコさんは、この寸劇を聴いていたが、自分も夫も攻撃されているように感じ、気分を害して途中で聴くのを止めたという。
 アオキ氏は「寸劇の正当性は理解したが、アクセントが誇張されていて、アジア系米国人がどれだけ長くこの国にいようと、いまだに外国人だと思われているのだという概念を広めてしまった」と説明。「私は、この寸劇に関わった人間を、無給停職および放送中の謝罪と、感受性訓練を受けるように要求した。結果、KFI・AMの幹部らは、彼らの上司の承認を得ることを条件に全てに同意してくれた」と述べている。
 また、アオキ氏は幹部らに宛てたEメールで「代用テスト」を行うように推奨したという。「コンウェイ氏たちが行ったことを黒人やユダヤ人と入れ替えて考えてほしい。もしジェイコブス氏がユウコさんと同じくらい知的でアクセントのない黒人女性と結婚していたとしたら、今回の寸劇は、黒人の『ゲットー語』のまねをするようなもので、皆、停職どころかクビにならずに放送できるとは考えなかったはずだ」
 アオキ氏によると、その後同局の幹部らは、MANAAと共に、アジア人に対する暴力とそれに拍車をかけるステレオタイプの問題に焦点を当てた、2時間の日曜スペシャルを放送することを提案。また、同局でアジア人ヘイトクライムを題材にした2本の新しい公共サービス広告も流すようになった。さらに、アジア系米国人のパーソナリティーを採用することにも前向きだという。 【訳=砂岡泉】

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