横綱朝青龍が土俵を去り2場所目を迎えた大相撲五月場所。角界を最後まで騒がせた暴れん坊が見られなくなり少し物足りなさが未だに感じられるが、先場所、千秋楽まで優勝を争い14勝を挙げ大関昇進を果たした把瑠都が元気だ。
 進境著しい25歳は今場所、新大関という重圧をもろともせず、落ち着いた取り口で順調に白星を重ね初日から6連勝。初優勝にも期待が掛かり、横綱の呼び声も高い。
 記者の私は2008年に開かれたロサンゼルス巡業で把瑠都と話した。当時はエストニアから訪日してわずか4年だったが、日本語は上手くハキハキとした受け答えをする好青年という感じだった。同じく好印象を抱いた力士が相撲界を席巻するモンゴル勢。皆まじめで敬語を使って話し、好感を抱いた。アメリカに長くいながら一向に上達しない自分の下手な英語を恥じたものだった。
 日本人力士が圧倒的多数を占める中で、少数の外国出身者の上位での活躍が目立つことを疑問に思った。その理由を元横綱の武蔵丸親方に尋ねたところ、「ハングリーさがないから」。短いながらにこの言葉は重みがあり、考えさせられた。
 親方は日本と同様に郷里ハワイもその精神が失われたと嘆きながら、強い力士になるには「稽古しかない」と力を込めた。確かに強い外国人力士はまじめで、よく練習することが巡業を通して分かった。
 野球も相撲と同じことが言える。マイナーリーグを見学に行くと、中南米を中心にした若い外国人選手が上を目指してがんばっている。通訳など助けはおらず、練習でのひたむきさがいい。試合前の相手打者、投手の研究にも余念なく、「メジャーを夢みる」日本人選手とは違った強い思いが伝わってくる。これら選手のように成功を収めて母国の家族を楽にするという在米日本人を探してもおそらく見当たらないだろう。
 残念ながらハングリー精神を持っていないが、何に対しても目標を立て、モチベーションを高めていく心構えは失わないようにしたい。【永田 潤】

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