私事で恐縮ながら、家内の手足が急に不自由になった。具体的には手指の関節が脹れ、ものを掴む力が入らず、たとえば水の入った薬缶を持ち上げることができない。足も大きく脹れ上がって靴が履けない。歩行もゆっくりと歩くしかない。これらの軽い症状は既に2年ほど前から始まっていた。かかりつけのファミリー・ドクターにも診療を依頼し、マッサージや鍼に通ったりもしたが、どんどん悪くなる一方である。リウマチか膠原病か痛風か腱鞘炎か、それらのどれかまたは合併症なのか、それすら分らない状態が続いた。
 そこでやむなく個人的に知り合いのT医師に相談すると「あいにくリウマチの専門医は数が少なくて、自分の周囲の160人を超す医師のなかにもいない。じつは自分の妻もリウマチなのだが、専門医がいないので仕方なく一般医と相談しながら専門外の自分が診ている」と説明された。これでは素人の当方は途方に暮れるしかない。
 最後の手段として、本紙にもときどき記事を書かれるI医師がリウマチについても記述されていたのを思い出して、超多忙のところを押してお願いしてみた。I医師は初診で血液検査を指示し、結果の出る2週間後にもういちど診察するがその間ある試薬を服用し、両方の結果をみながら病名を診断する、ということであった。2週間後I医師は「血液検査と試薬服用の結果からみて、症状はリウマチであり、そのほかの原因は見当らない」と診断し、この時からI医師の指導の下にリウマチの治療に専念することになった。これが5年前のことである。
 その後幸運な偶然が重なり、専門医を探し当てることができた。その結果現在では普通に日常生活を送ることができるまでに回復した。ここまで漕ぎ付けられたのは、ひとえに基本的な診療を怠らず、「リウマチだ」と正確な診断を下されたI医師のおかげである。素人が口幅な申しようだが、診療の基本を外すことなく、しかも素人にもわかるように状況や治療の正確な説明をする医師こそが本来の名医なのだと思った。【木村敏和】

Leave a comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です