ひと月ほど前になるが、英国の経済誌「エコノミスト」が、オバマ米大統領やメルケル独首相らが、財政赤字削減やユーロ危機収拾などで痛みを伴う決断を避け続けている状況を「日本化している」と批判する巻頭記事を掲載したそうだ。また、その後も、しばしば「日本化」という表現が欧米メディアに登場しているようだ。
 欧米における経済の低迷に対し、政治家が決断を先送りする様子を「日本化」と呼んでいるのだ。
 「オバマ大統領もメルケル首相も財政赤字の削減やユーロ危機への対応で痛みを伴う決断を避け続けている」「こうした現象は日本で20年前にバブルがはじけて以来、指導者たちが懸案をずるずると先延ばしをし、問題の解決を難しくしたのと同じだ。欧米の指導者はこうした前例を忘れてはならない」と記事は警告しているという。
 ここでわかるとおり「日本化」は決して良い意味で使われていない。日本の野田首相も先日行われた国会での所信表明演説の中で「日本化」の問題に触れていた。
 このように今、欧米で進行中の経済危機に対し、これら記事はリーダーの決断・実行を求めている。決断・実行を求めること自体は間違っていないと思うが、この危機的状況を「日本化」という言葉で表現されるのは日本人として少々気になる。
 たしかに日本人には、対立を避け、調整を重んじ、痛みはできるだけ伴わないようにすることを重視する側面がある。
 しかし、これは日本文化についてであり、国家としての根幹をなす政治、経済、外交などについてはそうあってはならない。決断の先送りは国益上たいへんなマイナスであり、国家存亡の危機をも招きかねない。
 欧米の経済危機に対し「日本化だ」と批判する記事を発表した欧米の報道に、私は麗しい誇るべき日本伝統文化を擁護する立場から強く残念に思う。
 ただ、現実問題として日本のトップ・リーダーが重要政治案件に逃げたり、先送りしたりし、そのツケを国民がこうむっている現実がある以上、欧米のマスコミばかりに文句がいえないことにはフラストレーションを感じざるをえない。【河合将介】

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