「いらっしゃいませ」手のひらをお腹の前で揃え、深々とお辞儀をしてあいさつする。これは先月日本に一時帰国した際、スーパーのレジで目にした光景だ。
 米国で暮らし始めた日本人からよく耳にするのが、たまにどちらが客なのか分らないほど対応の悪い店員に遭遇するということ。食料品が入ったバッグを乱暴に置く、レシートをぶっきらぼうに手渡す。思わず「怒ってる?」と聞きたくなってしまうような不機嫌そうな表情など。
 誰だって毎日を心地よく過ごしたいもの。店員から受けたたったひとつの悪い対応が1日を不愉快な気分にさせることだってある。「生きていれば嫌なこともあるさー。今日は(その店員にとって)悪い日だったのね」といつも気にしないようにしていた。
 そんな訳だったので日本でのていねいな接客には衝撃を受けた。それも決して高級スーパーではなく、どこにでもあるごく一般的なスーパーだったから。
 レジには次から次へと客がやって来るので、ていねいに対応している余裕などないだろう。しかし会計時の1分足らずのひと時でも客に気を配り、満足してもらえるよう日本ではきちんと教育されていた。
 10日間という滞在期間のなかで、日本人の礼儀正しさ、ていねいな対応、親切な心遣いをレストランやデパート、行政機関など、日常のいたるところで垣間見た。日本にいた時はそれが当たり前で気にも留めていなかったが、「これは立派な日本の良さだ」とあらためて実感。よく訪日した外国人に「ホスピタリティーの国、日本」と称されるが、久しぶりに帰国し、ささいなところでそれを見る機会が多く納得した。
 東日本大震災の時も、誰もが限られた物資を譲り合っていたこと、マニュアルにないアイデアで7万人の来場者を笑顔で守ったディズニーランドのアルバイトスタッフなど、日本人の国民性を各国が称賛した。相手のことを考えて行動することを教えられて育った日本人は、世界でも類を見ないほど美しい民族だと誇らしく思えた。【吉田純子】

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