札幌の女子大生が「ネガポ辞典」(主婦の友社刊)という本を出版し、話題になっている。否定的(ネガティブ)な言葉を、くすっと笑える肯定的(ポジティブ)な言葉に置きかえる本だ。
 たとえば「愛想が悪い」は「媚を売らない」、「友達が少ない」は「安易に群れない」、「まわりくどい」は「過程を大事にする」といった具合だ。
 この発想の転換法はただ単に面白いというだけでなく、人生の生きがいにつながるものになりえよう。
 この本の発想の原点は著者のひとりが中学時代に「太っていて自信がなく、いつも下を向いていた」ことにあったのだそうだ。当時、自分でも自身を「とろい」と思っていたそうだが、友人から「マイペースでいいね」といわれ、はっとしたそうだ。そして何でも良い方に発想を転換すれば悩みは消え、自信に変わることを知ったのだった。
 その後このアイデアは「全国高校デザイン選手権大会」で3位に輝き、iPhone用アプリ化を経由して書籍になったという。ネットを通じて広まり本になったところが、いかにも現代若者のアイデアといえるが、何かと先行きの見えない今の世の中にあって、せめて前向きで明るい見方や発想をしてみようということは世代に関係なく大切なことだ。
 かくいう私もシニア世代を迎え、記憶能力が低下し、昨日の出来事さえ思い出すのに時間が必要だったりすることがしばしばだ。そこで「物忘れが多くなった」から「忘脚力が充実した」という発想へ考え方を変えることにしている。自分にとって都合の悪い記憶は忘れ、平気な顔をしていられるのも「忘却力が充実」したおかげなのだ。「忘脚力の充実」は結果として、過去のいやな思い出から開放され、未来志向の人生を開くことができる。ただし、本当に忘れては困る約束、日程などは必ずメモしておくことだけは忘れないようにしている。
 ネガポジ発想をさらに一歩進め、うまく進行している時に反対を考える(例えば、健康の時に病気を思う)。そうすれば感謝の気持ちすら養うことが出来る。ポジティブに発想し、やるべき最善を尽くせば、あとは運を天に任せるだけだ。【河合将介】

Leave a comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です