ホームステイ先で、ボガードさん夫妻(両端)と暮らす杉山さん(左から2人目)と八田さん(同隣)
ホームステイ先で、ボガードさん夫妻(両端)と暮らす杉山さん(左から2人目)と八田さん(同隣)
 南加道産子会(千歳香奈子会長)が毎春実施する故郷北海道から高校生を招いたホームステイプログラムに杉山萌さん(北海道大麻高2年)と八田祥司太朗さん(札幌光星高1年)が参加し、3月末から9日間にわたり精力的に日程をこなした。2人は米国人家庭で生きた英語を学び、各所を訪問して貴重な経験を積んで、国際感覚を養った。
 プログラムでは、UCLAやアーバイン・コミュニティー・カレッジ、エルトロ高、全米日系人博物館、敬老引退者ホーム、タナカ農園などを訪れ、充実した日々を過ごした。行く先々で歓迎を受け、親善大使としての役目もこなした他、観光では、ロサンゼルス・ダウンタウン、ハリウッド、オルベラ・ストリート、大リーグ観戦、ディズニーランド、ビーチ散策などを堪能した。
 道路の広さ、交通量の多さ、建物の大きさ、食事の量の多さ、体格の大きさ、1ガロンサイズの牛乳、靴を履いて過ごす屋内、ホームレスの多さなど、日本と大きく違った光景や習慣に「カルチャーショックを受けた」という。だが、そこは好奇心の旺盛な若者。柔軟に順応し、積極的に異文化吸収に努めた。
 家庭での毎朝の始まりは、イリノイ州で離れて暮らすホストマザーの母親とのビデオ通話だ。幼少期に5年間日本で過ごした91歳の親日家と「オハヨー」などと、日本語を交え会話を弾ませる。愛情のこもったアメリカンスタイルの手料理は口に合い「とても温かく、本当の息子のように大事にしてもらっている」と喜ぶ。
 一日体験入学をしたエルトロ高では、朝から7時間の授業を受けた。受け身な日本人と対照的で、同年代がしっかりとした自分の考えを持ち、積極的に手を挙げて発言していることに圧倒された。日系移民史を学んでは、強制収容という暗い過去を知り、442部隊の果敢さが印象的だったという。八田さんが「アメリカのために戦った日本人のことを日本の学校でも教えるべき」と提案すると、杉山さんは「政府が過ちを認めて後に補償に応じたのはすごい。442隊員にも議会ゴールドを授与した」と、米国の民主主義精神に感銘を受けていた。 
 米生活について、杉山さんは「ものすごく楽しい。人々は明るく、親切で、日本人にも心を開いて笑顔で接してくれる」と語り、米留学を希望するほど気に入った。米国人のコミュニケーションの仕方は勉強になり「アメリカ人は、人の話をよく聞くことが分かった。『イエス』『ノー』と、曖昧さがなく、言いたいことをしっかり言う。日本人も学べばいいと思う」と述べた。将来は警察官を志し、テリー・ハラLAPD副本部長からは、アドバイスをもらい刺激を受けた様子だった。
 出身地の町の基幹産業である農業の再興を願う八田さんは、環太平洋連携協定(TPP)を気に掛けており、米研修ではやはり、地場産業に影響を及ぼす農業と農産品に関心を示した。スーパーマーケットでは、オーガニックの種類、量とも豊富なことに驚き、日本との大差を疑問に思ったが「タナカ農園に行って、広大な農地で稼動する大きなスプリンクラーなど機械化され合理的な大規模農業を目にし納得した」という。将来は世界貿易機関(WTO)で働くことを希望し、米農業の視察は、キャリアの役に立つことだろう。
 2人は、研修で収めた成果を、それぞれの地元に戻って伝え「将来に生かしたい」と口を揃えた。ともに大学進学を希望し、英語を習得して、日米の懸け橋となる考えを示した。
 道産子会のホームステイプログラムは、今年までに17回行い計34人が参加した。日本のプログラムOB会と連携しプログラムを支援している。毎回生徒2人を受け入れるホストファミリーのドン、ジュディー・ボガードさん夫妻は、2005年から世話をしており「毎年『ベストキッズ』が来てくれてうれしい。今年の2人は英語を上手く話し、楽しい時間を過ごすことができた。食後はすぐに皿洗いをしてくれ感心した」と話した。夫妻は今夏、OB会から招待され4年ぶりに北海道に赴く予定で「われわれの日本の子どもたちに会うのを楽しみにしている」と、再会を待ちわびている。【永田 潤】
南加道産子会による高校生の歓迎バーベキューパーティー
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