難病、奇病に苦しむ人が、世界中にいる。予防に努める間もなく、それまで健康で暮らしていた人に突如として病魔が襲い、症状は悪化していく。患者の肉体的、精神的苦痛、そして治療費などの経済的な負担は大きく、介護する家族の苦労を察する。現代の進んだ医療をもってしても、有効な治療法が見つかっておらず、厄介極まりない。
 そんな中、難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者を支援するチャリティー活動「アイス・バケット・チャレンジ」が今年の夏、話題となった。友人から指名された人が24時間以内に氷水をかぶるか、支援団体に寄付するかを選ぶ。両方する協力者も多いといい感心する。ただ、氷水をかぶったため死亡した人もいたといい、安全には注意してもらいたい。
 豪快に氷水をかぶるシーンがインターネットで公開され、患者救済の必要性が認知された。さらに、この運動に拍車をかけたのが、著名人の協力だ。続々と参加したおかげで、マスコミが取り上げ、社会現象になり感謝したい。
 オバマ大統領と同様に、寄付を選んだブッシュ前大統領だったが、チェックに署名しようとした途端にローラ夫人から氷水を浴びせられた。ドラマ仕立ての演出は、闘病者も笑い、ひとときの安らぎを与えたことだろう。政界、財界、芸能界などからの大物の活躍により、支援団体に集まった善意は、8月に約1560万ドルに上り、前年の同時期の180万ドルから大幅に増加し、効果は絶大だった。
 支援の輪は全米に留まらず、世界に波及し、多くの支援者がずぶ濡れになった。欧州では、政治目的に利用したと非難されたらしいが、一刻を争う緊急事態だけに、大目に見てもらいたい。
 日本でもノーベル賞受賞者などが協力し注目を集め、ALS協会には、8月までの2週間に国内外の約3000人から計2747万円の寄付(平均は年間約600万円)があったという。
 夏は終わろうとし、残念だがこの運動は静まるだろう。一過性のブームにしては、ならない。そして、ALSのみならず、他の不治の病を助ける啓発活動も重要である。すばらしいアイデアが出ることを期待したい。【永田 潤】

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