世界的な流れとして、プリントメディア特に新聞業界は、インターネット上にあふれる情報のあおりをもろに受け、発行部数の減少に歯止めがかからず、多くが経営不振に陥り悩まされている。みなさんに読んでいただいているこの羅府新報も例外でなく、社員として心苦しく思う。
先月末に当社の経営の危機的状況を社告で伝えると、話は日系社会にあっという間に広まった。コンピュータを持たず、得る日本の情報は、羅府新報のみという読者は、ショックを受けたことだろう。情報が錯綜し、事実と異なることもささやかれ、掲載した肝心の改善策を知らない人もいるといい、社会を混乱させていることを詫びたい。
窮地から脱却する一助になるかと、サンフランシスコのかつての日系新聞2社に目を向けた。北米毎日と日米タイムズは、凌ぎを削ったよきライバルだったが、2009年の2カ月間に立て続けに倒れた。
北米毎日で22年間勤務し、現在は羅府新報の英語部で記者と編集を務めるヤマモト氏によると、北米毎日は再建を図り、紙面数ページを費用がかかるカラー刷りにし、記事の内容も充実させ、営業部を強化するなど、いくつかの改善を試みた。だが、どれも不振だったという。
廃刊前の両社を振り返ったヤマモト氏は「経営危機についてコミュニティーに知らせないまま終わったのが、よくなかった」。悔しさを滲ませる表情は突然、愛読紙を失った読者にすまない気持ちそのものだった。「羅府新報は、少なくともコミュニティーに知らせている」といい、記者という社会的役割を自任しており、見習いたい。
両紙と羅府新報は、類似点が多い。日英バイリンガル紙、地域に密着の記事の内容、さらには3世、4世の活字離れに加え、フリー雑誌の台頭、インターネットの普及、日本人社会そして読者の高齢化という深刻さまでそっくりだ。たどる道、運命も同じなのか。そう思いたくはない。
羅府新報の経営陣は、第1弾として打ち出したオンライン版の購読キャンペーンに次ぎ、社運を賭けた改善策を練っている。みなさんの支援なしでは、再建はあり得ない。協力をお願いします。【永田 潤】