「敬老シニアヘルスケア」を引退した、ショーン三宅前代表兼最高執行責任者
「敬老シニアヘルスケア」を引退した、ショーン三宅前代表兼最高執行責任者
 昨年9月から始まった大規模な敬老4施設に関する売却反対運動からおよそ10カ月、売却成立から5カ月。売却を取り仕切った非営利団体「敬老シニアヘルスケア」(敬老)の代表兼最高執行責任者(CEO)、ショーン三宅氏がついに引退した。ゲリー川口理事長が三宅氏の功績を称える一方で、売却に反対してきた高齢者を守る会(旧、敬老を守る会)は「もっと早い時期に引退または罷免されていれば」と悔やむコメントを寄せた。【中西奈緒】

 22年間という長い年月、代表兼CEOの椅子に座り続け、6月30日をもって引退したショーン三宅氏のいわゆる「ワンマン経営」に関しては日系社会に長く疑問の声があった。

 今回、敬老4施設(引退者ホーム、中間看護ホーム、看護ホーム、サウスベイ看護ホーム)の売却プロセスが日系コミュニティーにきちんと開示されず「不透明」であったこと、日本語を中心に話す戦後移住者(新1世)の存在が無視されたことがその疑問に拍車をかけ、大規模な売却反対運動が起きるきっかけともなった。それゆえ、三宅氏の進退については日系社会にとって大きな関心事であり、ひとつの節目を迎えたといえる。

 売却に反対したコミュニティーの人たちからは、理事会のすべてのメンバーも含め「罷免」を求める声も多く聞かれた。しかし、最終的には三宅氏のみ引退し、理事会メンバーはそのまま残る形となった。現在、敬老は支援企業の助言を得ながら新しい代表兼CEOを探している最中だとし、当面の間は、この10年間人事部長を務めていたジーン金森氏がその代わりを務めるという。

 敬老は今年2月初旬に、4施設を正式に売却。50年以上におよぶ長期看護の運営から手を引き、現在は支援の対象をおもに4施設に暮らす約600人から、ロサンゼルス、オレンジ、ベンチュラ各郡に住む約7万人の日系高齢者へと転換。「日系社会の高齢者に貢献する」という敬老本来のミッションはそのまま持ち続け、さまざまな「プログラム」を通じてより広範囲にわたってサービスを提供していくという。

 三宅氏の引退についてゲリー川口理事長は、「日系人・日本人コミュニティーの高齢者たちを献身的に愛情をもって介護し、すばらしいリーダーシップを発揮してくれた」と羅府新報の取材に答え、なぜこのタイミングで引退なのかという質問に対しては「彼は引退する計画を前もって理事に話していて、引退の準備ができていた」と返答。三宅氏引退後の計画については「理事会メンバーとスタッフは三宅氏のすばらしい業績と敬老の歴史の上に成り立っている。南カリフォルニア全体の日系人・日本人に先進的なプログラムとサービスを提供するとともに、今うまくいっていることをこれからも続けていくことだ」とした。

 年俸およそ30万ドルを受け取ってきた三宅氏の『退職金』に関しては「スタッフの報償金については話さないことになっている」としつつ、「4施設の売却金(4100万ドル)から支払われることはない。売却金は日系人・日本人コミュニティーの高齢者の生活の質の向上のためだけに使われる」と強調した。

 また、新しい代表兼CEOに関しては「4施設売却にともない管理体制を変更する必要があることから、とりわけ、健康、コミュニティーづくり、老人病学といった領域にバックグラウンドを持ち、未来に向けて強いリーダーシップを取ることができる人材を幅広い視野に立って探している」という。

 当面の間、代表兼CEOの代理を務めるジーン金森氏は「現在のサービスやプログラムを維持すると同時に、新しい代表選びを手伝いたい」とし、三宅氏の引退について「引退はさまざまな事情に基づいた個人的なこと。新しいリーダーシップとともに次のステージに移行するいいタイミングだと思う」とした。

 三宅氏本人にも引退がなぜこのタイミングなのか、4施設売却の過程で起きた反対運動を振り返って何を学び、何を将来につなげていきたいと考えているのか、などについて質問形式でコメントを要請したが、1週間以上たっても回答はない。

 三宅氏本人を表舞台には出さず、川口理事長が三宅氏を守るように対応する方法は結局最後まで続くこととなった。三宅氏は理事会に雇われていた身である。しかし、22年の歳月とともに理事は入れ替わり、次第に、三宅氏の権限が理事よりも大きくなっていったことが考えられる。理事の存在が形骸化し、三宅氏の独走を止めるどころか、むしろ、かばい続けた彼らの責任は大きいといえる。

 日系コミュニティーとのきちんとした対話がないまま、また、戦後移住者のニーズが考慮されぬまま、日系社会の大切な財産であった敬老4施設を一部の人間の判断で失ってしまったことは、悔やまれる。(【下】はこちらから

※2015年9月からの敬老売却関連記事は日本語と英語でこちらから

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