先週末、久しぶりにMet Live in HDを見に行った。出し物はオペラ「ドン・ジョヴァンニ」。誕生日が過ぎたので、この映画館で初めて「シニア券を買うのだ」と意気込んでIDを出そうとしたら、さっさとシニア料金にされていた。「頭、半白髪で夫婦でオペラを見に行くのはご老人ですか、ああそうですか」などとは思わなかったけど。
最後に「映画でオペラ」を見に行ったのは前期の終盤の「マダム・バタフライ」。舞台や設定にいまいち偏見があってあまり興味がなかったのだが、たまたま時間ができたのでカミさんと一緒に行ってみた。
着物は欧米人に見られるような着崩れた感じはなく、ステージも簡素に作ってあったので逆に自分の中で場面を(イメージ的に)作り上げることもできた。この時はとにかく蝶々さん役のクリスティン・オポライスがよかった。
で、今回のドン・ジョヴァンニだが、曲はよく聴いていたが「粗筋と曲が一致せず」の状態だったので、結構楽しみにしてた。もっとも僕の持っているオペラはほとんどCDなので歌曲は聞くばかり。DVDなど2~3しか持っていないからイメージがわかず「そんなものさ」の感じ。
この辺のところはこんな感じかな、とか思っていたけど、やはり違ってた。舞台はこの分も簡素化されていて、主舞台の奥の壁がまるで安アパートか娼婦でも出てきそうな見かけだったのがなんとなく不自然だった。話が進めばそんなことは気にならなくなるのだが。
話はちょっと変わるが、ソプラノ歌手って、歌声と普通に話す時の声が結構違う人がいるようだ。僕の好きなナタリー・ドッセーは俗にいう「玉を転がすような」ソプラノだが、話し声はちょっとハスキーで低めの声。今回の「新婚ほやほやの村娘役」を演じたセレナ・マルフィも奇麗なソプラノだが、インタビューの時に話している声は滑(なめ)らかで随分と落ち着いた大人っぽい感じだった。彼女の場合、地声もいいなと思った次第。
「映画でオペラ」に行くたびに何か違ったものを堪能できる。次はカミさんのリクエストで「Eugene Onegin」を見に行く予定。楽しみだ。【徳永憲治】