「老いとどう向き合うか」―。一芸に秀でた人の助言には含蓄がある。
 爽秋、メディアを通じて「出くわした人」が3人いる。五木寛之(85)、弘兼憲史(70)、ビートたけし(70)のお三方だ。
 それぞれに功成り名を遂げた高齢者だ。
 五木氏は「青春の門」「親鸞」などで数々の賞を受賞している実力派作家。弘兼氏は、ご存知のとおり、「黄昏流星群」「島耕作」シリーズで知られる漫画家。ビート氏は俳優、タレント、映画監督など八面六臂(はちめんろっぴ)の活躍中だ。最近初の恋愛小説「アナログな恋」を上梓している。
 お三方の助言――。(無論、諸兄姉の中には異論を唱える方もいらっしゃるのが目に浮かぶのだが)
 五木氏「心身ともに衰えていく高齢者に『前向きにポジティブに生きろ』というのは残酷すぎる。また彼らが老後の『理想』を語るのも老いの『現実』から目を背けているにすぎない。老いとともに訪れる『孤独』を恐れず、自分だけの貴重な時間を楽しむ知恵を持て」
 弘兼氏「目標を立てて窮屈な人生をしないほうがいい。年寄りは好かれる要素が少ないことを知れ。配偶者とは距離を置き、お互いの領域に踏み込まないこと。深く付き合う友人は5人で十分。私の夢はニューヨークのブロンクスあたりで一人暮らしをすること」
 ビート氏「今の俺って、『富士山何合目』でいうと、『逆向きの五合目。頂上まで登って、もう下り坂に入って五合目まで下ってきたって感じだな。振り返ったらやり残したことがあるから、また登ろうって。『俺ってまだ面白いんだって』、そういう図々しいことを考えているんだ」
 三者三様。共通するのはお三方とも老いていく自分自身がよく診(み)えていることだ。【高濱 賛】

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