今年のノーベル医学・生理学の受賞者にがんに対し免疫が働くようにする新たな治療薬の開発に貢献した本庶佑・京都大学特別教授(76)が選ばれた。
 本庶教授は、研究者を目指す子供たちにこう述べている。
 「何か知りたいと思うこと、不思議だなと思う心を大切にすること。教科書に書いてあることを信じないことだ」
 英語でいう「Critical Thinking」(批判眼のある思考)。つまり身の周りにある事象情報をうのみにせず、まずは「それは本当に正しいかどうか、じっくり考察したうえで結論を出す」ことをいう。
 「世界経済フォーラム」(通称ダボス会議)の16年の総会では、「Critical Thinking」は「2010年に最も必要とされるビジネス・スキル」に選ばれている。
 その「Critical Thinking」を学生に徹底的に叩き込もうとする「21世紀最初のエリート大学」がある。サンフランシスコにある「ミネルヴァ大学」(Minerva School at KGI)だ。大学のモットーはずばり「Critical Wisdom」(批判眼のある博識)だ。
 この大学が今注目されている理由はそのユニークさだ。「ハーバードよりも入るのが難しく、教室も図書館も学生会館もない、へんてこりんなオンライン大学」(日本人初の同大学在校生、日原翔君)だからだ。
 4年間で7都市を移動しながら学ぶ。講義はすべてオンラインで行われる。世界中から集まった著名な教授陣とのディスカッション中心の授業、そして企業と協働して進めるプロジェクトを通じて課題解決のスキルを習得していく。
 一クラスは20人前後。授業は月曜から木曜日の午前中だけ。平日の午後や週末、どうするかは各自の自由。その時間にディスカッションに必要な知識を学生たちは貪欲に蓄積している。グローバル企業はミネルヴァ卒業生の獲得に血眼だという。
 かつてライブドア社長を務めたこともある実業家・平松庚三氏は、ため息交じりにコメントしている。
 「言われたことだけ見事にこなす、同一規格の学生しか採らない日本の会社にミネルヴァ卒業生をとるだけの度量はないだろうな」
 「Critical Thinking」は日本の企業にはまだまだ「無用の長物」だからだろうか。【高濱賛】

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