中米の小国コスタリカは独立国であるにも関わらず軍隊がありません。軍事費に使うお金を無駄なものと考え、それを教育費や医療費に使っているのです。といっても最初から軍隊がなかったわけではありません。日本が戦後まもない1948年、コスタリカでは革命が起こり、勝利したホセ・フィゲーレス・フェレールが突然軍隊を撤廃したのです。反対勢力もある中、不安定な国で革命直後に軍隊を無くすというのは大変な勇気ある決断だと思いますが、「兵士より教師を」というスローガンで、国民に無料の教育と医療を提供したのです。
 地球を何度も破壊できるほどの核兵器を持っている国に住んでいる人には、理解ができないかもしれませんが、軍事力の均衡が平和を生んでいるという考えは大きな間違いのようです。なぜって、軍隊のないコスタリカでは現在に至るまで70年も戦争のない平和が守られているのです。しかもコスタリカは何年も連続で、国民の幸福度が最も高い国として首位を譲っていないのです。
 もしあなたが大統領だったら、「明日から軍隊を廃止し、そのお金をもっと有意義な国民の求めることに使います」と高らかに宣言できるでしょうか。革命やテロが起きたらどうなるのか、隣国が攻めてきたらどうするのだ、と考えてしまうのではないでしょうか。でも軍隊を持つことと、拳銃を持つことは似ているような気がします。拳銃を捨てることができる国は、軍隊を捨てることができるのではないでしょうか。「本当に大切な事は何か」を考える力まで放棄してはいけないのです。誰かの利益や都合で、多勢に伝えられる言葉は、疑うべきかもしれません。
 『コスタリカの奇跡』という映画を見て、軍隊とは、教育とは、平和とは、幸福とは、さまざまなことを考えました。成人の日を迎えた島国では、国民総生産の1%までを防衛費に使えるとして予算を確保しています。コスタリカでは国民総生産の8%を教育費に使うことが憲法に明記されています。あなたは残りの人生をどんな国で過ごしたいと思いますか。戦争を「卒業」できる大人の国がいつか現れるでしょうか。【朝倉巨瑞】

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