4月1日、政府は有識者会議、衆参両院正副議長からの意見聴取を経て、臨時閣議で新元号を決定、菅内閣官房長官の記者発表に続いて安倍首相が談話を発表した。この日の東京は朝から晴れ渡り、諸所に満開の桜が咲いて新元号発表にふさわしい日となった。
振り返れば、今上天皇のお言葉にあったように、平成時代は戦争もなく平和な時代だった。しかし、平成はまた日本各所が次々に地震や津波、原発災害などに見舞われた時代でもあった。
そして経済は、バブル崩壊から長年の低迷が続き、企業に体力をと非正規雇用による大量の低所得者を生み出した。非正規雇用者の職は不安定で、先の見えない不安定な生活は、若者層に都市集中を加速させ、結婚や子育てをためらう風潮を作り出し、核家族化を進行させて少子高齢化社会をさらに加速させたようだ。家族や地域の絆はバラバラになり、人々が支え合う日本の社会形態が崩壊したように見える。
戦後の復興期から高度成長時代を通じて、人々はがむしゃらに働いた。長時間残業は当たり前、海外へも企業戦士として多くのビジネスマンが旅立ち奮闘した。しかし、それを支えたのが「一生懸命働けば、昨日よりは今日、今日よりは明日の生活が向上する」という希望と実感があったからだ。一見家庭を顧みない猛烈ビジネスマンも「俺が家族を支えている」という自負があり、家族も一家の主人に敬意と感謝の念を持っていた。「働けば明日は良くなる」という希望こそ未来へのエネルギーである。
日本は黒船来航から幕府崩壊・明治維新と続き、やがて長い戦争の泥沼へ突入した。悲惨な太平洋戦争で敗戦、それでも国民は焼跡の灰の中から立ち上がった。困難な時代、心から国民に寄り添った今上天皇、5月1日には若い皇太子が新天皇に即位して令和元年となる。新元号には、「この閉塞感に満ちた社会から脱却したい。新しい時代を自分たちで築きたい」という国民の願いが託されている。これを契機に若者たちが明日への希望を持てる日本へと全国民一体となり新時代の建設に立ち上がってほしいと心から願うものである。【若尾龍彦】