最近の日本の話題で、高齢ドライバーの深刻な事故が、やけに多く伝わり社会問題化している。原因は加齢による衰えに他ならない。ブレーキとアクセルのペダルの踏み間違え、信号無視、一方通行や高速道を逆送して正面衝突など、高齢者の死亡事故は他の年齢層よりやはり高いという。目的地さらには自宅への道順さえも忘れたりする認知症の運転は、特に危険だと専門家が指摘する。
多重衝突後に店舗に飛び込んだ車の老夫婦がともに亡くなったり、69歳の運転の車が歩道の園児の列に突っ込んだり、赤信号を突っ切った88歳が横断中の3歳の幼子と母親を死亡させたりと、痛ましい人身事故は後を絶たない。被害者と遺族の苦しみを思うと胸が痛む。
高齢化がどんどん進む日本では、高齢ドライバーは増えていくと予想され、免許制度の見直しなどの対策が急がれ、警察は免許証の自主返納を促している。免許を取ってから60年以上、無事故無違反を誇る人もいて、それは立派でいいが「そろそろ…」を考えることも大事。加齢による判断の遅れは、事故につながる恐れがある。本人は「まだ大丈夫」と、危険の自覚がない人も多くいて、家族の説得が重要だ。
そんな中、俳優の杉良太郎さんは「事故起こし、人を傷つける前に」と75歳になるのを前にした今月、メディアを呼んで返納の「模範」を披露してくれた。演技、慈善活動、端整なお顔、どれをとっても逸品で、卒自動車運転までも…。「さすが杉様!」。他の有名人も続いてもらいたい。
だが地方では、買い物や通院には車が必要。運転を止めた途端に生活が極端に不自由になる問題が起こる。免許を返納した2カ月後に、家族のライドの助けがなかった日に無免許で運転して事故を起こした人は「社会から遮断された感じがした」と、こぼしていて、日本でもウーバーやリフトなど配車サービスの充実が望まれる。究極の解決法は、子供から大人、身障者まで運転手なしで、目的地に到着できる自動運転車だ。だが、実現、普及はまだまだ先のようなので、取り返しのつかない事故を起こす前の英断しかない。【永田 潤】