同じ名前でも日本とアメリカではこうも違うかと驚くことがある。
1年ほど前にサンディエゴのお洒落なグルメモール「リバティーマーケット」のドリンク店で、KOMBUCHA ON TAPという品目を見た。店員が「日本から来たお茶だ」という。試飲させるというのでお願いしたら、シュワシュワとした喉ごしの、ちょっとツンとくる、やや甘めのノンアルコールビールのような冷たい飲み物を出された。昆布茶とは似ても似つかぬ。どこが昆布茶?
というわけで調べてみたら、KOMBUCHAは日本で昭和40年代から50年代に大流行した「紅茶キノコ」のことではないか。小学生の時に通ったピアノ教室の先生が家庭で栽培した紅茶キノコを飲ませてくれた記憶が蘇った。無知な昭和の小学生にとってポットの中でモヤモヤした物体が揺れていて、それは恐ろしげな飲み物であった。
さらに調べると、それは東モンゴル発祥の発酵飲料で、日本以外ではKOMBUCHAと呼ばれているが、日本では おそらく昆布茶との混同を避けるために紅茶キノコと呼ばれた。しかしキノコ菌との縁はない。
よし、もうこれからは片仮名で書こうコンブチャと。
さて50年前に日本で爆発的に流行った紅茶キノコは、現在こちらでコンブチャと呼ばれ流行している。いや、本当に、最近、あちらこちらで見かけるのだ。
OCフェアで、ある会社がブースを出していたが、次々と客が試飲に訪れていた。冒頭に書いたON TAPとは、生ビールで使用するのと同型のタップ(蛇口)から注ぐ「生コンブチャ」である。瓶入りもあるが、皆、「タップがおいしい」と言っていた。オレンジやラズベリーフレーバー付きでも甘すぎず、ビールの健康的なオルタナティブと捉えられているのが人気の理由かもしれない。
サワークラウトやキムチといった発酵食品を専門に扱う会社が、コンブチャの手作りクラスを開催しているという。自家製コンブチャに挑戦してみようか。カスピ海ヨーグルトやぬか漬けのように、友人とコンブチャの床を交換する日が近く来るかもしれない。【長井智子】