新型コロナの感染拡大を防ぐため、世界中の政府が対策を講じる今、卓越したリーダーシップを発揮し、注目する人物がいる。カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事だ。
 目まぐるしく変化する状況を毎日州民に説明する知事のブリーフィングでは、新型コロナをめぐる対策からデータに至るまで、膨大な情報量が頭に入っていることに驚く。金額、パーセント、人数などの数字は、時に5桁以上になる場合でも、最後のひと桁まで言明。テレプロンプター(原稿を電子表示するカンペ)は使っていない。後半の質疑応答も無駄なく効率的で、自身の体験や人名をひんぱんに持ち出し、質問内容をぐっと自分に近づけた答えには説得力がある。その紳士的な態度は、トランプ大統領やクオモNY州知事とは対照的だ。
 3月4日に緊急事態を宣言し、19日には事実上の外出禁止令を他州に先駆け州規模で発令。毎日のように出される州知事命令は、家賃やローンの支払い猶予勧告、州統一試験の見合わせ、医療従事者の託児所利用優遇、運転免許証の期限延長、レジ袋の無料化など、州民の暮らしに密着しており、実にスピード感がある。
 4代目サンフランシスカンのニューサム知事は子供の頃、ディスレクシア(難読症)を理由に、7年間で5回も転校している。小学校では自尊心を失い、授業はまるで拷問だったと回顧する一方で、大学卒業後にワインショップの経営で成功した後、2003年にサンフランシスコ史上最も若い36歳で市長に当選した同氏は、「枠にとらわれない豊かな創造力と、失敗を恐れない起業家精神はディスレクシアの恩恵」と述べている。
 市長になった直後、全米で初めて、同性カップルに結婚証明書を発行し始め注目を浴び、ホームレス対策や、IT技術を活用した市政の近代化でも大きな成果をあげた。
 知事は先週も、新しいサイト「Californians For All」を立ち上げた。高齢の隣人宅訪問や食事配達、献血など、得意分野でボランティアを募るこのサイトには、初日に2万2千人もの州民が登録した。
 ブリーフィングを聞いていると、暗闇の中に希望の光が見えてくる。【平野真紀】

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