長かったね~。やっと外に出られるね。新型コロナウイルスの感染で緊急事態が宣言され、厳しい外出自粛が続いた街に笑顔が戻った。街ゆく人たちの表情も明るく見える。5月25日夕刻、安倍首相は記者会見で緊急事態の全面解除を告げた。
 緊急事態が宣言されて1カ月半、人々には日に日にストレスが溜っていった。自粛要請は強制力を伴わない。ところが人々は不満ながらも見事に街から人波が引いて行った。村のおきてを重視する農耕民族の特徴か、戦時中の隣組の監視体制の名残りか…。大っぴらに外出したり酒場やパチンコ店に出掛けた人には有形無形の非難が浴びせられる。出産のために郷里の親元に帰郷すると、感染のある他県からの入院は断られたり、無言電話やSNSの誹謗(ひぼう)中傷の書き込みが行われたり、時には落書きや投石もあったという。
 深刻なのは自営業の飲食店や旅館・ホテル・各地の観光関連施設である。自粛要請が発せられると途端に客足がパタッと止まった。やっとその日その日の日銭稼ぎで回転している店である。休業補助金の支給が報道されたが手元に届いたというニュースは少ない。首相肝いりのマスク全家庭配布もいまだに届かない。厚労省や総務省などの役所の仕組みが目詰まりの気配がある。
 今回のパンデミックを通じて人々はさまざまな体験をし、今までの生き様やビジネスの有様を振り返った。コロナ収束後はサプライチェーンや食料自給率の見直しや、さらなるネット活用の働き方など社会全体が大きく変わるに相違ない。今後も同様の世界的感染拡大は訪れる。いかに多くの生物と共存するか、これからの変化に期待したい。
 散歩の途中に高校生らしき3人組に声をかけられた。広島から自転車で東京までやって来て一泊し、今日は広島まで帰るという。日焼けして逞しい筋肉の若者たち、自粛のこの困難にあっても、自力で友人たちと大きなことを成し遂げたという達成感と誇りが全身に満ちていた。「生きかわり死にかわりして打つ田かな」の句が浮かぶ。なんだか将来に希望が持てそうで明るい気持ちになった。ありがとう、未来を背負う若者たちよ! 【若尾龍彦】

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