大統領選挙当日、夕方から興味津々に開票状況のニュースを追っていた。今度こそはとお祝いに備えワインとケーキも用意した。すると地図がみるみるうちに真っ赤に彩られていくではないか。4年前の悪夢がよみがえってきた。
 「まさか……またか?」
 絶望感のあまり、その夜は早目に就寝した。選挙前のバイデン大幅リードの予測が今回も外れたメディアの報道に対しても落胆した。
 COVID・19が勃発した後、今年3月から6月の3カ月間、アジア人に対してのヘイトクライムが全米において2100件(うち832件がカリフォルニア)報告された。通報していない数も含めると実際はもっと多いだろう。こんな危険な混沌(こんとん)とした社会の風潮がさらに悪化し、あと4年も続くのかと憂鬱(ゆううつ)になった。
 トランプ優勢が続く中、翌日のバイデンの演説が、意外にも自信たっぷりの笑顔で、勝利へ向けて明るい内容だった。自分はほぼ諦めムードだったため、政治家は負けそうになっても支援者たちへはポジティブなメッセージを送るのだろうと懐疑的に思った。
 状況が徐々に変化したのは、翌々朝、ラジオ目覚ましで「バイデン追い付き、まもなくリードか?」で飛び起きてからだ。なぜかその朝の太陽が、力強く見えた。明るい希望の象徴だ。
 累算システムが当日投票受理から数え始めて、郵送は後回しなど知らなかった。ウィスコンシン、ミシガン、ジョージア、ペンシルバニアでの追い上げは、まるで1600メートルリレーの陸上競技で、差をつけられていたアンカーが後方から猛烈に疾走して来るようだった。最終的なバイデンの獲得予測選挙人総数306は、くしくも2016年のトランプがランドスライドの大勝利だと豪語した総数と同じだ。
 胸をなで下ろしたのも束の間、トランプはいまだ敗北を認めていない。彼に投票した7300万人もの支持者がいることも現実として受け止めよう。オバマ元大統領は、バイデン次期大統領の就任後も、国民の二極化が続くことを懸念していると述べた。悲しいが同感せざるをえない。ニューノーマルの馴化を危惧する。ケーキは食べ切ったが、ワインは残した。【長土居政史】

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