念願のワクチンが開発されて、コロナパンデミックに一条の光が見えたとはいうものの、一般に接種が行き渡るまでには3~4か月はかかりそうだし、その間にさらに死者は確実に増え続けるだろう。
 犠牲者の数がパールハーバーの奇襲や9・11を上回ると聞けば、停戦も和解もない細菌との闘いは、ただ防戦あるのみという気がする。
 世界中でいつもどこかしらで戦争は続いているとはいえ、それが身近に起こっていないだけに、第二次世界大戦を体験した私の年代でさえ、今や平和ボケで、「私は大丈夫」の範疇(はんちゅう)で日々を暮らしているところへCOVID・19の攻撃をもろに受けた。
 ひと月も自主拘束すれば、まあ3カ月も経てば、秋ごろには何とか子供たちも学校に戻れるだろう。感謝祭にはみんなで集まろう。繰り返し期待を裏切られながら、「私は大丈夫」が利口なはずの人間にとんでもない行動を取らせている。
 マスクをつけて、手洗いを励行して、人との接触を避けるという、思えば誰にでもできる防御ができないということは、「私は大丈夫」だと信じ、親戚だから、友人だからというだけで、コロナ・フリーという気がして、結婚披露宴があれば招かれたほうも「私は大丈夫」と喜んで集まる。国民に範を垂れるべきホワイトハウスに「私は大丈夫」が2百人も集まってパーティーをなさる。まあこれは大統領に忠誠を誓う儀式のようなもので、おもねりや、出席しなければ後々具合の悪いことが出来るかもしれないと言うおもんぱかりもあるだろうが、コロナ・パンデミックを甘く見ている常識人が実に多いということだろう。
 仕事には出ているが、公共の交通機関の利用はもちろんタクシーも、ウーバーも、不特定多数の人が利用したかもしれない物はさけている。自宅から半径2マイル半の範囲は、もっぱら自分の足で歩くことにしている。これもお天気次第で、シカゴはこれから雪の季節、自宅にこもる日があるかもしれないが、病院にワクチンが届けられ、医療関係者や高齢者が接種を受ける画像がテレビ画面に映し出されている。
 もう少しで「私も大丈夫」の仲間に入れそうである。【川口加代子】

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