日系米国人の3人に1人は65歳
米国の人口や政府の財政などをデータに基づいて紹介しているUSA FACTSのウェブサイト「アジア系米国人の多様な人口構成( The Diverse Demographics of Asian Americans)」(2021年5月17日付)によると、国勢調査局が2019年に発表したアジア系米国人の中間年齢層の中で、日系米国人は52・4歳と最も高齢だった。これは第2位のフィリピン系米国の43・2歳に比べると10歳近くの差がある。また、日系米国人人口の29・4%が65歳以上だった。つまり、今後、日系米国人人口の高齢者は増加していくことが予想される。この日系米国人の中に「在留邦人(注)」が含まれているかどうかは定かではないが、やはり、米国に住む日本人の高齢者が増えていくことは十分に考えられる。
そこで問題になってくるのが「老後の住まい」である。海外に比べて手厚い保障が受けられる日本に永久帰国または帰化して老後を過ごしたいという人がいる一方で、数十年にわたり米国で暮らしている人の場合、子どもや孫に囲まれ、むしろ母国よりも住み慣れた米国での老後を視野に入れている人も少なくないだろう。
老後の生活に求める条件を明確にする
もともとロサンゼルスには、「敬老シニアヘルスケア」と呼ばれる非営利団体があった。滞米年数の長い日本人ならば、ロサンゼルスに骨をうずめる場合、おそらくこの中の施設に入居することになるのだろうと考えたことが一度はあるのではないだろうか。同団体は、1975年に日本人や日系米国人の老後を懸念した故フレッド和田さんらが中心となって作られ、敬老引退者ホーム、敬老中間看護施設、サウスベイ敬老ナーシングホームなどが設立された。日本人や日系米国人のために食事や言語環境が整ったこれらの施設はあっという間に話題となり、入居するために数年の待ち期間は当たり前という盛況振りだった。
しかし、2016年に「敬老シニアヘルスケア」は、営利法人のパシフィカ社に所有していた4施設を全て売却。40年以上の歴史を誇った「敬老シニアヘルスケア」の売却問題は、特に南カリフォルニアに住む日本人や日系米国人に大きな衝撃を与えた。高齢者はもちろんのこと、高齢の両親がいる人や、自身の老後の住まいにと考えていた人にとっても、米国における老後の生活について改めて検討する機会になったのではないか。
改めて調べてみると、南カリフォルニアには、「敬老シニアヘルスケア」のような大規模な高齢者施設ほどではないが、比較的在米邦人が住みやすい環境を備えた高齢者施設や介護施設が思いのほか多い。民間や非営利団体が運営しているのが特徴だ。例えば、くだんのパシフィカ社が所有する4施設には、いまだ日本人・日系人の入居者が多く、文化に配慮したサービスやアクティビティーを提供している。また、米系の施設であっても、特に大規模な高齢者施設にはアジア系の入居者も多く、自発的にコミュニティーを作っているところもあるようだ。
在米邦人が米国の高齢者施設で老後を過ごす場合、特に言語や生活面における不安は拭い切れない。個々の年齢や健康状態、経済事情によっても選択肢は変わるが、まずは「日本人や日系米国人の居住者が多く住んでいる」「日本語で手続きができる」「日本食が食べられる」など、自分が老後の生活に求める条件を挙げ、それに合う施設を探していくというのがベストな方法だといえるだろう。
(注)
外務省領事局政策課が発表した「海外在留邦人数調査統計 令和3年版(令和2年10月1日現在)によると、「国(地域)別在留邦人数推計上位50位推移」において、米国に住む在留邦人数は42万6354人で最も多かった(第2位は中国で11万1769人)また、都市別の内訳では、ロサンゼルス都市圏で暮らす在留邦人数は6万7501人で第1位だった(ニューヨーク都市圏は3万9850人で第3位)。
南カリフォルニアの高齢者施設(アルファベット順)
以下に、日本人や日系米国人の高齢者にとって、環境やサービス内容などの面から住みやすいと思われる南カリフォルニアの高齢者施設をまとめた。
◉JCIガーデンズ
JCI Gardens

トーレンスにある「JCIガーデンズ」は、2008年11月より、リトル東京サービスセンターが管理を請け負っている自立型高齢者住宅で、日本人・日系人も多く住んでいる。同センターは、小東京を拠点に、低所得者やサポートを必要とする人に包括的な社会福祉や地域開発サービスを提供している非営利団体。同住宅に関する問い合わせは、電話で同センターまで。
※入居状況によっては順番待ちリスト(Waiting List)に登録する必要あり。事前に必ず問い合わせを。
場所 トーレンス
住所 2000 W. 162nd St., Torrance 90504
電話 310・515・3642(リトル東京サービスセンター)
◉ケイアイ・ロサンゼルス・ヘルスケア・センター
Kei Ai Los Angeles Healthcare Center
場所 リンカーンハイツ
住所 2221 Lincoln Park Ave., Los Angeles, CA 90031
電話 323・276・5700
ウェブサイト-www.keiai-la.com
下記の「さくらガーデンズ」同様に、パシフィカ社が運営する同センターでは、病気やケガなどによって日常生活に支障をきたしている人を対象に、24時間体制で質の高いケアとサポートを提供。日本人や日系米国人の入居者も多い。ガーデナに「ケイアイ・サウスベイ・ヘルスケア・センター」がある(15115 S. Vermont Ave., Gardena, CA 90247、電話 310・532・0700 ウェブサイト- www.keiai-southbay.com)。
◉小東京タワーズ
Little Tokyo Towers Apartment

小東京の中でもひときわ目立つ16階建ての高層ビルで、約300戸を有する高齢者向けアパート。62歳以上で、収入面などで条件を満たす低所得者を対象にしている。小東京タワーズ内にある「小東京・ニュートリション・サービス(高齢者昼食会)」が、1976年の設立以来、食堂や宅配形式で、日本風の昼食を手頃な価格で連日提供している。
場所 小東京
住所 455 E. 3nd St., Los Angeles, CA 90013
ウェブサイト-www.royalpropertymgmt.com/portfolio-items/little-tokyo
※入居については運営会社に問い合わせ。
◉和みホーム
Nagomi Home

今年開業した地域密着型の日系介護施設。 通常業務では、3人の日本人看護師が居住し、着替えや2時間毎のトイレットプログラム、病院の送迎などの日常生活を通して、24時間体制で高齢者をサポートしている。食事は、健康を第一に考えた献立で、日本食を中心に提供。定員は6人。加州RCFE(シニアケアホーム運営/管理)取得。
場所 コビナ
住所 1128 N. Fairvalley Ave., Covina CA 91722
電話 626・404・8798
ウェブサイト-www.homenagomi.com
◉ニューホーム・シニアケア
New Home Senior Care

ニューホーム・シニアケア(旧JPシニアホームズ)は、オレンジ郡にある日本人・日系米国人を対象にした住宅型高齢者施設。「安全」「(日本の)食事」「幸せ」に重点を置き、文化や生活様式にも配慮。「アシステッドリビング」は60歳以上であれば入居可能。また、アルツハイマー型認知症などの場合はソーシャルサービス(社会福祉課)の許可があれば60歳以下でも入居できる。定員は6人。ホスピスケアあり。同施設には、Senior Transactional Specialistがおり、入居までの手続きなどをサポートしてくれる。例えば、入居資金がなくても、不動産を持っている場合、適切な手続きを経てすぐにケアを受けられるように手配することが可能。
場所 ラグナヒルズ、ミッションビエホ
ラグナヒルズ(1カ所)住所 25032 Woolwich St., Laguna Hills, CA 92653
ミッションビエホ(3カ所)住所 24685 Acropolis Mission Viejo, CA 92691、24516 Saturna Dr., Mission Viejo, CA 92691、24591 Saturna Dr., Mission Viejo, CA 92691
電話 949・449・5555
ウェブサイト-www.newhomeseniorcare.com
◉ニッケイシニアガーデン
Nikkei Senior Garden
日本の伝統や文化を尊重したコミュニティーとして、和洋折衷の食事や文化的なアクティビティーなどさまざまなサービスを提供している。日常生活の補助が必要な入居者のための「アシステッドリビング」や、アルツハイマー型認知症の人を対象とした「メモリーサポート」がある。
場所 アーレッタ
住所 9221 Arleta Ave, Arleta, CA 91331
電話 818・899・1000
ウェブサイト-nikkeiseniorgardens.com
◉OC介護ホームズ
OC Kaigo Homes

「味噌汁が飲めるシニア介護施設」と銘打っているだけあって、言語や食事などの面において、日本人が快適に過ごすことができる環境が整っている。日常生活や健康管理をサポートする「基本サービス」に加え、アルツハイマー型認知症などの認知症、パーキンソン病、糖尿病、緩和ケアなどのサポートを行う専門的なサービスも提供している。
場所 ラグナヒルズ
住所 22322 Savona, Laguna Hills, CA 92653
電話 949・701・3049/408・393・3337
ウェブサイト- www.ockaigohomes.com

◉オハナケアホーム
Ohana Care Home
サンディエゴの住宅型介護施設。個室4部屋を配し最大6人を受け入れている。 24時間体制で、日本人スタッフによる和食を中心とした栄養バランスの取れた食事の提供から、着替えやトイレなどの日常的な補助、そして認知症ケアまで幅広いサポートを行っている。9月下旬にサンディエゴ北部のパウウェイに2件目をオープン予定(11部屋/定員15人)。
場所 サンディエゴ、パウウェイ(9月下旬オープン予定)
住所 8569 Innsdale Lane, San Diego
電話 619・259・2125
ウェブサイト-www.ohanacarehomesd.com
◉さくらガーデンズ
Sakura Gardens at Los Angeles

さくらガーデンズは、パシフィカ社が運営する高齢者施設で、総合的な介護情報を提供するサイトCaring.comの2021年度「ケアリング・スーパースター」賞などを受賞している。日常生活においてある程度の介助を必要とする人向けの「アシステッドリビング」サービスほか、アルツハイマー型認知症や記憶障害などの認知症の人を対象とした「メモリーケア」も併設。日本人や日系米国人の入居者がほとんどで、日本食や文化的なアクティビティーを提供している。
場所 ボイルハイツ住所 325 S. Boyle Ave., Los Angeles, CA 90033
電話 323・212・5811
ウェブサイト-www.pacificaseniorliving.com/ca/los-angeles/sakura-gardens
◉テラマチホームズ
Teramachi Homes
2006年に建てられた55歳以上を対象にしたコンドミニアム。24時間セキュリティー付きで、プールやスパ、フィットネスジムを備えている。居住する高齢者をとりまとめた組織によって小東京の飲食店へ食事の一括注文を行っており、現在、毎週火曜日と木曜日に、通称「テラミール」を提供している。
場所 小東京
住所 267 S. Sand Pedro St., Los Angeles, CA 90012
※購入およびリースについては不動産会社に問い合わせ。
米系大型リタイアメントコミュニティー
以下は、いずれも55歳以上を対象にした大規模なアクティブシニアコミュニティーで、アジア系や日系米国人、日本人の住人も少なくない。各分譲住宅を取り扱っている日本人の不動産エージェントもいる。
◉ラグナウッズ・ビレッジ
Laguna Woods Village
1964年設立。2100エーカーを誇る西海岸で最大規模のシニアタウンで、オレンジ郡の32番目の市として認められている。現在1万8500人が暮らすゲーティッド・コミュニティーで、敷地内には、戸建て、コンドミニアム、高層アパートなどの分譲住宅をはじめ、ゴルフ場、クラブハウス、プールなどがある。
場所 ラグナウッズ
住所 24351 El Toro Rd., Laguna Woods, CA 92637
ウェブサイト-www.lagunawoodsvillage.com
◉レジャー・ワールド
Leisure World
米国初の大規模なリタイアメントコミュニティーで、1962年から入居が始まった。約540エーカーの敷地内にある住宅は平屋も多く、クリニック、郵便局、図書館など生活に施設がそろっているほか、イベントやアクティビティーも盛んに行われている。ゲーティッド・コミュニティーなので安全性も高い。
場所:シールビーチ
住所 13533 Seal Beach Blvd., Seal Beach, CA 90740
ウェブサイト-www.lwsb.com
在宅ケアサービス団体
南カリフォルニアには、自宅に訪問しさまざまなサービスを提供する在宅ケア会社も多い。中には、日本人・日系米国人を対象にしているところもあり、利用者はもちろんのこと、日本にいるその家族にとっても心強い。

◉げんきホームケア
Genki HomeCare
サンディエゴ全域に居住する日本人・日系米国人を中心とした高齢者を対象に、訪問介護サービスを提供している非営利団体。ケアギバーによる食事、入浴、トイレの着替えの介助などの身体介護サービスほか、食事の準備、ペットの世話、自宅安全確認、病院への送迎および付き添いなどの生活支援サービスがある。
サービス地域 サンディエゴ全域
オフィス住所 1260 3rd Ave., Chula Vista, CA 91911
電話 858-699-7020
ウェブサイト-genkihomecare.org
◉ホリーサービス
Holly Services

2004年から日本人・日系米国人の高齢者を中心に、日本式の質の高い在宅ケアサービスを提供している。食事準備から入浴・排せつ介助まで、高齢者の生活を支援。スタッフは日本人の割り合いが多く、アメリカと日本の介護経験から取り入れたトレーニングを受けている。
サービス地域 ロサンゼルス郡、サンディエゴ郡
ハシエンダハイツオフィス住所 2211 S. Hacienda Blvd. # 101, Hacienda Heights, CA 91745
サンディエゴオフィス住所 4445 Eastgate Mall #200, San Diego, CA 92121
電話 626・333・6767(ハシエンダ)/858・217・5150(サンディエゴ)
ウェブサイト-hollyservices.com
◉ホームケア・アシスタンス/ミレニア
Home Care Assistance/Millenia
日本人コミュニティーを対象に、高齢者のための在宅ケアサービスを行っている。買い物、食事の準備など日常生活における介助を行う訪問介護に加え、24時間体制でのフルタイムケア、そしてアルツハイマー型認知症や認知症、パーキンソン病のケアも提供している。
サービス地域 ロサンゼルス郡、オレンジ郡、ベンチュラ郡オフィス住所 19 Peninsula Center, Rolling Hills Estates, CA 90274
電話 1・888・285・4913
ウェブサイト-homecareassistance.com/millennia

◉ホープ・インターナショナル・ホームケア
Hope International Homecare
食事(日本食)の準備、入浴、トイレ、軽い運動のサポートに加え、投薬管理、付き添い、買い物など、利用者の要望に合わせたパーソナルなケアから家事手伝いまで、多様なサービスを提供。1日4時間から最長24時間まで、必要な時間に必要なサービスを受けることができる。
サービス地域 ロサンゼルス郡、オレンジ郡
オフィス住所 20705 S. Western Ave., #112 Torrance, CA 90501
電話 310・782・7979
ウェブサイト-www.hi-homecare.com/japanese
高齢者対象の支援プログラム
上記の施設やサービス以外にも、日本人・日系米国人の高齢者が利用できるプログラムがある。
◉Keiro
「癒しケア」

2017年より、緩和医療に精通するプロビデンス(Providence)と提携し、進行性や慢性疾患・衰弱などの深刻な病を抱える日本人・日系米国人の高齢者に緩和ケアを提供。医師や看護師、ソーシャルワーカーのバイリンガルチームが、患者の既存医療チームと密接に連携しながら文化的な背景・価値・心のケアにも配慮したケアを提供している。
電話 213・873・5791
メール-programs@keiro.org
ウェブサイト-keiro.org/jp/iyashi-care
◉リトル東京サービスセンター
Little Tokyo Service Center
「高齢者支援」
高齢者を対象としたさまざまなサービスを日本語で行っている。ソーシャルワーカーによるケアマネジメント(交流の場の提供、ソーシャルセキュリティー、メディケア、メディカルなどの政府援助のサポート)をはじめ、カウンセラーとのセラピーや教育ワークショップ、ケアギバー(介護人)情報、無料または低料金のアクティビティーやクラス、サポートグループなどがある。
※リトル東京サービスセンター
小東京を拠点に、低所得者やサポートを必要とする人に包括的な社会福祉や地域開発サービスを提供している非営利団体。
電話 213・473・3035
ウェブサイト-www.ltsc.org/helping-seniors-japanese
オレンジ郡日系協会
OCJAA(Orange County Japanese American Association)
「しあわせプロジェクト」

オレンジ郡におけるソーシャルサービスや日本文化活動を、さまざまなイベントやプログラムを通して提供している日系協会。「しあわせプロジェクト」では、高齢者に弁当を届けるプログラム「まごころ弁当」をはじめ、介護者支援サービス、電話によるサービス、シニアランチョンなどを行い、高齢者やその家族を支援している。
電話 714・730・3551
メール-network@ocjaa.org
ウェブサイト-www.ocjaa.org
その他
Keiroの「助成金プログラム」のように、日本人や日系米国人の高齢者向けのサービスを提供する非営利団体を支援しているところもあり、コミュニティーが必要とするさまざまなニーズに対応している。同プログラムの詳細は、ウェブサイトwww.keiro.org/jp/grants-programを閲覧。
※掲載されている内容は変わる可能性があるため、詳細は各施設や団体に要問い合わせ(2021年8月30日現在)。
私はEiko Hans と申します 現在Columbus Ohioに永住して51年になる80歳の女性です 日常生活はすべて自分で行っていますが これから先この状態がいつまで続くか不安です 健康ないま次の段階の計画実行を考慮しています 今夜メールを読み安堵致しました 有難うございました これから計画を立てたいと思います どうぞ宜しくお願い致します。