今回のコロナに限らず、人類の歴史を振り返れば、これまでにマラリア、スペイン風邪、エボラ、AIDS、SARSさらに麻疹(はしか)、水ぼうそう、インフルエンザなどの「ウイルス」による感染症が発生した。コレラやペストも感染症なのだが、厳密に言うとウイルスではなく「細菌(バクテリア)」だ。どちらも病原体である。
 複雑な構造の細菌は、単細胞であり自ら倍増できる。一方、タンパク質と核酸のみで形成されるウイルスは、とてもシンプルな構造体だ。自ら細胞を持たないので、どこかの生物のホストセル(宿主細胞)に入り込みそこでの仕組みを利用して複製し一気に増殖していく。つまり細胞の外では自ら単独では増えない。それゆえ定義上、無生物のカテゴリーにも入れられるようだ。しかし微生物(マイクロオーガウム)に分類されるのでややこしい。細胞の構造を持たないウイルスには抗生物質は効かない。
 さまざまだが、ウイルスの大きさは、直径80〜220ナノメートル(*1ナノメートル=10億分の1メートル=100万分の1ミリ)で、細菌の20、50、100分の1程の大きさだ。細菌の方が大きく、光学顕微鏡で見えるが、ウイルスは電子顕微鏡でないと見えない。とにかくどちらも肉眼では視認できないほど、とてつもなく小さい。
 あの突起がある王冠の姿をしたCOVIDの画像は、気味悪く奇妙で恐れをなす。浅はかかもしれないが、われわれ人類の生命に脅威を及ぼす「敵」とみなすウイルスを絶滅させてしまった方が良いのでは…?という考えも浮かぶ。事実、天然痘が1980年WHO(世界保健機関)によって地球上初として撲滅宣言がなされた。
 しかし、エコシステム、つまり自然界の生態系がバランスよく維持するにあたり、ウイルスがその環境づくりに(善玉の細菌も存在するように)重要な役割を担うことが近年の研究によって解明されている。例えば、生物の行動や進化を助長するのだ。
 そもそも人間誕生以前にウイルスや細菌の方が、地球に存在していた。科学の進歩で理解を深め、皆で一緒に進化しながら共存していく心構えが大切だ。【長土居政史】

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