肉感的な女性を描いて一部の男性陣から絶大な人気を博してきた著名な米漫画家が日系人に対する差別用語を使ったとして、ロサンゼルス・タイムズから即刻、掲載を打ち切られた。
 問題の漫画は、赤いスイミング・ドレスを着た若い白人女性めがけて、日本軍の零式戦闘機が低空飛行で接近、機関銃掃射してくる。女性は素早く光線銃で応戦、零戦を撃ち落とすという話だ。零戦を「ジ○○〇・ゼロ」と呼ぶ表現が1カ所出てくる。
 「ジ○○〇」という表現は、まだ日米関係が険悪になる前には特に差別的ではなく、「ジャパニーズ」の略語として使われていたらしい。ところが第二次大戦前から戦中にかけて、それは日系人に対する蔑視用語となった。日本という国家の行動に対する米国人一般の嫌悪感が強まる中で、いじめや差別は米国に住む日本人移民やその子である日系人に向けられた。その後、日系市民連盟(JACL)など日系人の公民権運動団体が中心となって差別用語の撲滅に動いた結果、今では米国ではメディアから「ジ○○〇」は姿を消した。
 同紙の「アジア・太平洋諸島系アメリカ人連盟」は、漫画家の人種差別行為を非難するとともに掲載の即時停止を要求する文書を提出した。日系人を含むアジア系ジャーナリスト80人がメンバーだ。同紙は2日後の12月3日付けには社告を掲載した。「漫画には民族差別用語が含まれていた。これはわが社の道徳的規範に相反するものだ。陳謝するとともにこの漫画の掲載を停止する」
 私は連載コラムを書いている日本のメディアでこの話を取り上げた。元大企業の重役だった男性からメールが届いた。「米国での生活体験がないのでジ○○〇の実感はない。2500年以上の歴史を持つ日本人が、たかが300年の歴史しかない国の人間からそう呼ばれても、ああそうですか、だ。実感がないのだから、ジ○○〇は私にとっては差別用語ではない」
 私は「自分が体験しないと人の痛みは分からないもんですね」と嫌味っぽく返信した。「日本人の日系人観はその程度なんだ」と相手を上から目線で小馬鹿にするほど「ニッケイジンナイズ」(日系人化)した自分を見た。【高濱 賛】

Leave a comment

メールアドレスが公開されることはありません。