
強制収容所においても、戒厳令下やヨーロッパの戦場においても、日系米国人は信仰を頼りに、強制立ち退きや終わりの見えない収容生活、不当な強制送還、家族との別れ、兵役、再定住など、日系という人種や自分たちの宗教が国の安全を脅かすと見なされた時代を生き抜いてきた。
全米日系人博物館(JANM)と南カリフォルニア大学(USC)の伊藤真聰日本宗教・文化研究センターは国立公園局日系米国人強制収容所助成プログラムの支援を受け、2月26日から「経と聖書 信仰と日系米国人の第2次世界大戦中の強制収容(Sutra and Bible Faith and the Japanese American World War II Incarceration)」展を共催している。展示は11月27日まで。ソーシャルメディアのハッシュタグは「#SutraAndBible」。

ダンカン隆賢ウイリアムズ氏とエミリ・アンダーソン氏が共同でキュレーションを行ったこの展覧会は、日系米国人が戒厳令下の鉄条網の中や戦場で生き延びていくために、仏教とキリスト教のコミュニティーがどう心のよりどころとなり、希望を与え、慈悲の心を教えてきたのか、そのさまざまな道のりを紹介する。そして、苦難の旅の中にあった日系米国人コミュニティーを絶望から救うために宗教が果たした役割を探る。
唐突に悲痛な立ち退きに直面した人々の物語が、収容所に携行した祈祷書や宗教書、精神を生かし続けるために自らの手で作った仏像や十字架、祭壇など、目を見張る数々の物を通して伝わってくる。展覧会の中心となるのは、救世軍の北地満寿夫大尉がポストン強制収容所に収容されていた間に肉筆で記した注釈付きの2カ国語聖書をはじめとする収容所で編まれた聖典や、ハートマウンテン強制収容所の墓地から掘り出された法華経の言葉が墨書きされた経石である。

展覧会に合わせて出版される書籍は、展覧会名と同じく「経と聖書 信仰と日系米国人の第2次世界大戦中の強制収容」で、JANM、カヤプレス、USC伊藤真聰日本宗教・文化研究センターが共同出版する。ダンカン隆賢ウイリアムズ氏とエミリ・アンダーソン氏の共同編集によるフルカラーの同書は、学術、芸術、宗教、社会正義の分野における30人以上の著名人によるエッセーと写真をふんだんに使った説明を織り混ぜ、戦時中の日系米国人のスピリチュアルな適応とレジリエンス、そして国家公認の人種・宗教に対する憎悪を経た後に、連帯と賠償へ向かい始めた運動についても記している。
同展と同書を通して、第2次世界大戦中の日系米国人の経験における、宗教の教えや実践、そして宗教的コミュニティーが果たした役割が浮かび上がる。

ダンカン隆賢ウイリアムズ アメリカ研究&エスニシティーの教授であり、USC宗教学部長、USC伊藤真聰日本宗教・文化研究センターのディレクターを務める。1993年には曹洞宗の僧侶として出家し、博士号を取得したハーバード大学で大学付きの僧侶として勤務した。近著に「アメリカンスートラ 第二次世界大戦における信仰と自由の物語」(2019年ハーバード大学出版局。20年グロマイヤー宗教賞受賞作、LAタイムズベストセラー)。その他の著書に「禅の向こう側」(プリンストン大学出版局)、編書に「ハパジャパン 歴史、アイデンティティ、混血/混血日本人の表現」(カヤプレス)、「アメリカ大陸の一世仏教」(イリノイ大学出版局)、「アメリカ仏教」(ラウトレッジ/カーゾンプレス)、「仏教とエコロジー」(ハーバード大学出版局)がある。ウェブサイト—
duncanryukenwilliams.com
エミリ・アンダーソン JANMのプロジェクト・キュレーターで、専門は近代日本。2010年、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)で日本近代史の博士号取得後、10〜14年ワシントン州立大学日本史助教授、14年オークランド大学博士研究員。著書に「近代日本におけるキリスト教」(14年ブルームズベリー)、編書に「日本と植民地下の朝鮮における信仰と実践」(17年パルグレイブ・マクミラン)。日本と太平洋地域における宗教と帝国主義に関して多数の記事や書籍の一部を執筆。また、共同キュレーターを務めた「ボイルハイツ 土地の力」展(02〜03年JANM)、「人を食べる 神話と現実」展(15年〜現在サンディエゴ人類博物館)をはじめ、博物館における展示の企画・実施にも数多く関わる。

USC伊藤真聰日本宗教・文化研究センター 客客員研究員の受け入れ、ポストドクターフェローシップの提供、教員主導の研究・出版、公開会議・イベント、大学院生の支援を通じて、USCにおける日本研究を促進している。11年に国際交流基金の支援を受けてUSCに設立された後、14年に真如苑から多額の寄付を受け、真如苑の現在の苑主である伊藤真聰法主に敬意を表して組織名を変更した。同大学のダナ&デビッド・ドーンサイフ芸術文学科学カレッジの学術組織内に位置する。詳細についてはウェブサイト—
dornsife.usc.edu/cjrc/
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