特別展のリボンカッティングを終え、握手を交わす渡辺謙さん(左)とデーブ・ロバーツ監督

 ドジャースは15日、大谷翔平選手が所属するエンゼルスを本拠地球場に迎え、試合前のフィールドで日本・地元日系社会との交流イベント「ジャパニーズ・ヘリテージナイト」を催した。和太鼓演奏に、音頭、君が代斉唱、二世週祭のPRを行った。始球式を俳優の渡辺謙さんが務め、沖縄生まれで日本人を母に持つデーブ・ロバーツ監督が捕球し、スタンドを沸かせた。球場内に、日本の野球と日系野球リーグの歴史を紹介する特別展がイベントに合わせて開幕し、ドジャースは日本と地元日系社会との固い絆をいっそう強めた。

ドジャースのレプリカユニホームに身を包み、始球式を務める渡辺謙さん

 イベントは、LA太鼓一座の熱のこもった演奏を皮切りに、コンコースでは浴衣姿のグループによる「炭坑節」の踊りが続いた。それに釣られて観客が踊りの輪に入り日本文化を堪能する姿も見られた。3年振りの開催が決まった二世週祭は、ナンシー・オオクボ共同委員長と女王、コートが愛嬌(あいきょう)を振りまき、祭のりへ参加を呼び掛けて、大きな拍手を浴びた。また、先月亡くなった元運輸長官、ノーマン・ミネタ氏の数々の功績が紹介され、遺影がスクリーンに映し出され故人をしのんだ。
 渡辺さんが投げる前に、武藤顕総領事が投手を、ABC7のスポーツアンカー、ロブ・フクザキさんが捕手となって名誉始球式を行った。君が代の斉唱はソプラノ歌手で日系のコーラスグループを指導する竹下圭子さんが、米国国歌は元二世週祭女王で歌手のロレーン・ハナコ・キンケードさんが歌い、球場に美声をとどろかせた。

始球式を終え、ロバーツ監督と抱き合う渡辺謙さん

 そして、「ラストサムライ」やゴジラなど数々のハリウッド映画に出演し、ブロードウエーミュージカルでは「王様と私」でトニー賞の候補に挙がるなどして米国で最も成功した日本人俳優の1人である渡辺謙さんが紹介されると、会場はドッと沸いた。
 日本は阪神、大リーグはドジャーファンを公言する渡辺さん。ドジャースで大リーグデビューを果たした野茂英雄元投手の大ファンという。野茂投手の背番号「16」が入ったレプリカジャージーを身に付けて登場すると、歓声を浴びながらマウンドに上がった。大きく振りかぶったモーションから投じた一球がロバーツ監督のグローブに収まると、監督と抱き合い大役を終えた。イニングの間には、野茂投手の現役時代の勇姿がスクリーンに紹介され、往年のファンを喜ばせた。

【写真上】名誉始球式を務めた武藤顕総領事(右)とロブ・フクザキさん【同下】君が代を斉唱した竹下圭子さん(左)と米国歌を歌ったキンケードさん

 試合はドジャースが一回に3点を先制。先発アンダーソン投手は九回1死まで無安打無失点の快投を演じていた。ドジャースファンが総立ちで快挙に期待を掛ける中、打席には3番大谷が入った。この日は2三振と内野ゴロに抑えられていた大谷だが初球をとらえ、俊足を飛ばして三塁打を記録した。スタンディングオベーションを送られマウンドを降りたアンダーソン投手だったが、ロバーツ監督によると「日系のイベントの日に、日本人の大谷に初ヒットを打たれて悔しい」と、こぼしたという。
 特別展は外野のパビリオンの一階の一角に設けられ、ドジャースがホストを務めるオールスターゲーム(7月19日)で多くの野球ファンが鑑賞でき、8月末まで開催される。展示は、米国から日本への野球伝来して今年150周年を迎えた日本の野球と、戦前からの日系リーグが紹介されている。展示品にはプロ野球の名場面のビデオや大リーグの日本遠征の写真、野茂投手のスパイク、イチロー選手のサイン入りバットなどが輝きを放っている。

【写真上】LA太鼓一座による熱のこもった太鼓演奏【同下】手を振って拍手に応える二世週女王とコート、左端がオオクボ共同委員長

 日系米国人の野球史では特に、「鉄条網の向う側で」と題した戦時中の強制収容所を紹介する展示で住居のバラックとフィールドのミニチュアが異彩を放ち、目を引く。日系リーグでは、木製のホームベースや、日系人選手がベーブ・ルース、ジョー・ディマジオ、ケーシー・スティングルといったスター選手と一緒に写った貴重な記念写真も見ものの一つである。
 展示のキュレーターを務めたのは、非営利組織「二世ベースボール・リサーチプロジェクト」の創始者で代表を務めるケリー・YO・ナカガワさん。ナカガワさんは日系米国人の野球史を研究し出版している。今回の展示について「大リーグに挑戦した先駆者の野茂から大谷まで日本人選手が続いた歴史を紹介している。日系人選手を大リーグに紹介することができて意義の深い展示になった」と胸を張る。「今年のオールスターゲームが行われるこのドジャースタジアムで展示ができて幸運である。ぜひ見に来てほしい」と話した。

巨大スクリーンでノーマン・ミネタ氏の功績を紹介し、故人を追悼した

 ロバーツ監督は展示について「日本と米国の野球史を紹介していて素晴らしい。私はUCLAで歴史学を学んだので特に興味深く鑑賞した」と感想を述べた。
 渡辺さんは「始球式だけではなくて、ジャパニーズ・ヘリテージナイトで観戦することもうれしい。野球は米国の国技であると思うが、そこで日本の特集が行われ、日本を受け入れてくれるメジャーリーグというものを改めて感じた1日になった」と、感慨深げに話した。渡辺さんはこれまでにテレビのドキュメンタリー番組の撮影で、強制収容所や当地の日系社会を訪れたことがあり、展示では収容所内の球場のミニチュア模型を興味深く見ていた。
 日本から渡米して戦っている大谷選手については、「未知なるものをずっと追って挑戦し続けている点に共感を感じる」とたたえた。役者としての自身の長丁場の撮影に重ねながら「シーズンは長いため、いい時もあれば悪い時もあると思うので、コンディショニングや精神面を整えて、頑張って挑戦してほしい」とエールを送った。(永田潤、写真も)

【写真右】九回一死に打席に立ち、チームの初安打となる三塁打を放つ大谷選手【同左】快投を演じたアンダーソン投手(右)をねぎらうロバーツ監督
試合開始を宣言するセレモニーで「It’s time for Dodger baseball ! Come on.」と叫ぶ渡辺謙さん

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