アメリカ暮らしで私が恋しく思うのは、身のキュッとしまった、みずみずしい日本のキュウリだ。和食には、似た味を求めて小さなピクルス用やペルシャン・キューカンバーで代用するが、やはり物足りない。そのため日本ではつい季節外れの高値でも買ってしまう。
 ところが、母の介護で福岡の実家で過ごしたこの夏は、キュウリがたくさん飛び込んできた。八百屋で買い込んだところへ、収穫期とあってお隣さんからもらい、野菜作りに精を出す妹夫婦から届き、実家の裏庭でも1本2本と取れ始めたのだ。毎日キュウリを使っても、まだ冷蔵庫にゴロゴロ。そこで思い出したのが、キューカンバースープだ。
 キュウリ数本の皮をむいてサイコロ状に切り、ニンニク一片、少量のチキンスープと共にミキサーで混ぜ合わせる。それにスープ3カップ、サワークリーム2カップ、ヨーグルト1カップ、酢大さじ2、塩こしょうを合わせる。暑い夏にぴったりの爽やかなスープが出来、高齢の母に喜んでもらえた。妹もレシピを持ち帰った。
 キューカンバースープは米国で教わった料理だ。日本から来て初めてのポットラックパーティーでおいしく、それがキュウリのスープと聞いてびっくりしたことを覚えている。以来、キューカンバースープは、私のレシピメモ帳に入った。
 メモ帳にあるレシピを眺めていると、それを食べた場面と作ってくれた人を思い出す。キューカンバースープは昔、UCLAの家族持ち学生用アパートに一家で住んでいた頃、アパート群の片隅にあったCO―OP保育園の保護者パーティーで初めて味わった。大学や大学院を無事卒業し、皆が各地へ散り散りになってから数十年。レシピを教えてくれた彼女は元気でいるだろうか。あの頃の人々や子どもたちはどうしているだろう。家庭菜園のキュウリが大豊作という夏の日本で、キューカンバースープに思い出を呼び起こされている。(楠瀬明子)

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