
毎年大人気のフードイベント「デリシャス小東京」が6月25、26日の週末、小東京で開催され、多くの人でにぎわった。イベントを主催した小東京コミュニティーカウンシルのクリステン・フクシマさんとキサ・イトウさんによると、今年はより多くの人に小東京を楽しんでもらえるように工夫し、3週にわたった昨年に代わりイベントを2日に凝縮して、アクティビティーを重視した。

また、小東京と日本食をテーマにしたオリジナルピンやステッカー、Tシャツなどを販売する「ポップアップショップ」を開設したり、小東京にまつわる質問や課題をクリアすると賞品がもらえる「Jタウン・ビンゴ」を企画したりするなど、新しいアイデアを導入した。さらに、日米文化会館の日本庭園で食べる「かき氷」や、ハワイの麺料理「サイミン」の販売、「スパムむすび作り」や「ドーナツデコレーション」の体験、さらには書道のデモンストレーションから、「コケ玉」「生花アレンジメント」「ふろしき」のワークショップまで、さまざまな角度で小東京を楽しむアクティビティーを用意した。
だが、何といってもデリシャス小東京の真髄はテーマに沿って小東京の飲食店を食べ歩く「セルフグルメツアー」。今年は1コース増えて3コースになった。抹茶人気にあやかる「抹茶マニア」コースはスイーツの食べ歩き4カ所。「風月堂の抹茶まんじゅう」「ミドリ抹茶の抹茶ソフトクリーム」「ティーマスター抹茶カフェのアイス抹茶ラテ(オーツミルク使用)」「アゼの抹茶クリームブリュレ」を楽しんで、さらにおみやげに特製「抹茶ソフトクリーム・ピン」がもらえるという抹茶づくし。人気の「抹茶」がテーマというだけでなく、ベジタリアンやグルテンアレルギーの人が参加できるコースとしても企画された。
「Jタウン トリート&イーツ」は「MILK+Tの瓶入りアイスティー」「カフェ・ドルセのソーセージ・ドーナッツ」「オカヤマ工房のキャラクター菓子パン」「ラッカンラーメンの豚肉ギョーザ」「ライス&ノリ」のサケ柚子味噌おにぎり」という取り合わせ。それぞれをつまみながら、老舗小売店の「文化堂」と「羅府物産」に立ち寄り、最後は日米文化会館の日本庭園にいざなわれるという、見どころ・味わいどころが盛りだくさんのコースだ。

土曜日に同コースに参加したサンディエゴ在住のロビン・ドバシさんとカリム・チーさんは、「どれもおいしかったけれど、おどろいたのはおにぎり。おいしくて感動した」と感想を述べている。2人は、このイベントを目的に週末をかけて小東京を訪れイベントを堪能した。2日目の日曜は「Jタウン・ビンゴ」を達成してビンゴの最終地、新規開店したばかりの「ヨボセヨ・スーパレット」でルーレットを回したくさんのおみやげを手にしてから、「ヒストリーガイドツアー」に向かった。
最後は「LITTLE TIPSY TOKYO (ほろ酔い小東京)」は酒類を含む目新しいコース。「酒道場」「ファーバー」「ウルフ&クレーン」の3店を巡り、アルコールドリンク1杯と、ペアリングされたおつまみ料理を堪能する。「これは友だちと週末を楽しむには最高の企画だね」と話すのは、酒道場でテーブルを囲んでいたマリオ・マーティンさん、ベス・コパツさん、アイリス・ブレークさん、リボ・マシャジさんの4人組。「もっと小東京を知りたくて」「それにコミュニティーをサポートしたい」と口々に参加の動機を話し、テーブルに料理が運ばれてくると、目を輝かせた。酒道場がこの日のために用意した「鶏唐揚げとワッフル ワサビ・メープルシロップ添え」は、米国料理定番の「チキン&ワッフル」に日本風のひねりを加えたメニューである。「ベジタリアン向けには揚げ出し豆腐の選択もある」と同店マネジャーのキャットさん。ドリンクはサッポロ・オリオン・サントリーによる「ビール飲み比べセット」、またはカクテルの「メープル・スパイス・オールドファッション」をチョイスする。

同コースではこの先、1街のファーバーで「麻婆豆腐タコス」、2街のウルフ&クレーンで「マッシュルーム・トースト」と、典型的な日本料理の垣根を超えたクリエーティブな料理が、ほろ酔い気分の彼らを待っている。
デリシャス小東京のグルメツアーの人気は高く、3種類のセルフツアーは完売。また、全米日系人博物館および小東京歴史協会の協賛で食の歴史を探訪するガイド付きの「フード・ヒストリー・ツアー」も3回実施の全てが売り切れとなった。販売された有料チケットの総数は約500枚。前出のイトウさんによれば、ウォークインのイベントと合わせると2500人以上が週末のイベントに参加したと見込まれる。
デリシャス小東京で提案された和食文化は、伝統的な日本の料理ばかりでなく、日系人の多いハワイから伝わったスパムむすびやサイミン、小東京の歴史と結びつく老舗店のメニュー、あるいは現在流行中の食材をテーマにするなど、さまざまな切り口を見せていた。それは、多様性に富む米国の中にある「小東京らしさ」でもあり、米国に根付いた、独特の日系食文化があることを実感させるものでもあった。
週末のにぎわいは、ちまたの人々の日本食への興味の高さが伺えると同時に、メニューにベジタリアン用のオプションを用意するなどの点で主催者にも多様な米国人のスタイルに配慮する姿勢が見られ、目的地としての小東京の魅力はますます高くなっているようだ。
小東京は、町の一角に店舗や文化が凝縮している点ではロサンゼルスでも有数の場所。新型コロナウイルスのパンデミックの期間中に空き店舗だった物件にも、現在は多くの新規店が開店している。SNSなどを通じて町の魅力がさらに伝えられ、今後もますます人気が高まることが期待されている。(長井智子、写真も)