昼間の強烈な暑さが少しやわらいだかなと感じるようになる秋には、日本映画が恋しくなります。以前この地で活躍をしていたすずきじゅんいち監督等の有志によって、チャノマ映画祭という名前で始まった日本映画祭はパンデミックでも毎年継続されて、今年で17回目になりました。オープニング上映会には、着任されたばかりの曽根健孝(そねけんこう)総領事や海部優子ジャパンハウス・ロサンゼルス館長も参加しました。日本映画で広島の酒の歴史を知り日本酒を堪能する場面に、日本の食文化やカルチャーがハリウッドでも十分に理解されていることを感じました。
この小さな日系コミュニティー映画祭を純粋に楽しもうとする人々は、オレンジカウンティーからだけでなく、サンディエゴやサンフランシスコなどの遠方からもやってきます。日本や韓国、中国からもオンライン上映やオンラインでの舞台あいさつなど、慣れない英語と時差にも負けることなく、楽しんでいる姿がそこにあります。テクノロジーは簡単に国境を超えて、言葉の壁も時間の壁もなくし、交流を可能にしています。
今年の映画祭のテーマは「カラーズ」でした。国籍や性別や人種にとらわれることなく、さまざまな立場を理解し合い、発言し、表現し合うことの素晴らしさを、日本映画を観賞する機会を通じて知ることには大きな価値があります。私たちが、さまざまな「色」の中で混ざり合い、ぶつかることがあっても尊敬し、成長していける世界に生きていることは素晴らしいことです。
そして毎回驚かされるのはボランティアの力です。映像や演劇や写真などを学ぶ学生を中心に、さまざまなボランティアが積極的に活躍をしています。その一つ一つの力が、映画祭の運営を実現させているのです。そして、新しい交流を通じて、ボランティア自身が発見をし、経験をしている姿を見ることができます。たとえ小さな映画祭であっても、参加する人たちのそれぞれに意味があります。「また次回も参加したい」と笑顔で話すボランティアや、献身的に支えられる家族に感謝をする日でもあります。(朝倉巨瑞)