ニューヨーク州で「成人被害者法」(The Adult Survivors Act)が11月24日から施行された。この法律で性的暴行を受けた女性による提訴の時効(10年)が撤廃された。女性雑誌「エル」の人生相談コラムを26年間執筆していた著名なコラムニストのジーン・キャロル氏(78)が同法を適用して、同日、ドナルド・トランプ前大統領(76)を提訴した。カリフォルニア州も同趣旨の法改正に踏み切っており、来年1月1日から施行される。
 キャロル氏によると、トランプ氏が彼女に性的暴行を働いたのは1995年。同氏は51歳。トランプ氏は49歳の時だ。場所はニューヨークの超高級デパート「バークドルフ・グッドマン」の更衣室だったという。キャロル氏は、24年後の2019年にトランプ大統領(当時)を性的暴行(強姦)罪で提訴したが、トランプ氏はこれを全面否定。裁判所は時効を理由にキャロル氏の提訴を退けた。キャロル氏は名誉毀損で別件提訴している。そして待つこと3年、性的暴行で再提訴したわけである。
 アメリカといえば、銃の野放し、人種差別、貧富の差といったネガティブな話題ばかりが目立つ。だが新型コロナ予防薬を開発したのも、LGBTQ(性的マイノリティー)に対する偏見撲滅に立ち上がっているのもアメリカだ。今回の「成人被害者法」もアメリカの底力を示す実例だ。しかもその先陣を切るのがニューヨーク州と共にカリフォルニア州であることもうれしい。
 日本語には「泣き寝入り」とか、「長いものには巻かれろ」といった表現がある。世間体を気にして、性的暴行を受けた女性が提訴しないケースがまだまだ多いと聞く。就職活動で相談しにいった某メディアの大物記者に暴行を受けた女性が提訴したケースがあった。当初司法もメディアも実に彼女に冷淡だった。最終的にはこの女性は実名で公の場に出て、有罪を勝ち取ったのだが、その後、あとに続く女性はあまりいない。どうも日本には被害者が提訴するには不都合な社会構造的障害があるのかもしれない。(高濱 賛)

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