宝くじの「パワーボール」がすごいことになっている。ジャックポットの賞金が米国宝くじ史上最高額に上り詰めており、月曜朝の時点で19億ドルを超えた。賞金額を掲示するコンビニの3桁電光掲示板は999で止まったままだ。
この新聞が印刷される今夜に抽選が行われるので、火曜日の朝には結果は出ている。六つの数字が全て当たるジャックポットが出なければ、次の抽選に繰り越される。今回が連続41回目の「繰り越し抽選」だという。もしも当選が出なければ水曜日が第42回となるが、そうなるとこちらも史上初のロングラン。19億ドルあったら南の島が一つ買えるそうだ。
さて私だが、ニュースで盛んに話題になりだした先週、立ち寄ったコンビニで、「あ、そういえば」と興味心で手を出してみた。だが買い方がよく分からず初回はうっかり違う種類のくじを買ってしまう始末。その回が繰り越しになったので、「今度こそ」と次はパワーボールを買った。ジャックポットの当選確率は2億9220万1338分の1だというから、普通に考えれば当たるはずがない。「史上最高額に貢献する」というちょっとしたお祭り気分だった。
ところがその晩、眠りに就く前に、なんとなく気分が浮き浮きしていることに気が付いた。もしも当たったらこんなこと、あんなこと…。次の日も、その浮き浮きは続いた。そして悟った。宝くじは夢を見る夢を買うのだと。
しかし、これは少し皮肉な気付きでもある。あれやこれやと夢を描くなど簡単なことだった人生の時代は過ぎ去り、いまや宝くじの力を借りないと夢を見ることもできなくなってしまったのか。
そんな自問はあるにせよ、「大きな夢を見る夢」を買う2ドルは、アイスクリーム1本よりも幸せな気持ちにさせてくれた。だから、それはそれで良しとしよう。
宝くじにマジックがあることを知り、「グッドラック」と言ってくれた店員さんに「Thank you, I will enjoy dreaming.」と返し、購入した2枚目のパワーボールチケットを抱えている。しかしもうそろそろ大当たりが出てくれないと毎回コンビニに足を運ぶのも面倒である。(長井智子)