福岡の実家に帰るのに、初めてフェリーを利用した。東京九州フェリー。正確には、横須賀港から新門司港まで980キロの船旅だ。長期間のクルーズを楽しむのが時間的に無理なら、せめて1日を洋上で過ごしたいとの夫の強い要望による。
 心配した台風は幸い日本列島の南を駆け抜け、乗船前日に温帯低気圧に。深夜の出航に合わせて横須賀港に着くと、フェリー「はまゆう」は6階建て1万5千トン余りの大きさ。4、5、6階が乗客用スペースで、客室の他、5階にレストラン、6階には大浴場・露天風呂・サウナなどもある。四国沖を通り豊後水道を抜けて、新門司港到着は翌日夜。ほぼ丸1日を、3度の食事と入浴の他は、行き交う船と海とを眺めてのんびり過ごした。
 この航路は7月で開業2年とまだ新しい。この快適なフェリーが今後も長く続いてほしいものだと乗組員と話していると、「トラックドライバーの労働時間規制が来年2024年から強まるので開業した。需要は今後いっそう伸びるはず」と思いがけない答えが返ってきた。
 「物流業界の2024年問題」という言葉は聞いたことはあった。労働時間の削減を目指す「働き方改革」の一環で、来年4月から年間時間外労働時間の上限が大幅に制限されるという。すると今のような長距離長時間運転が難しくなる。時間外手当ての激減で運転手が他の職種に移る可能性も増える。結果として1日に運べる荷物の量が減り、日本国内の産業にも生活にも大きく影響が出るのでは、という問題だ。提言される解決策の一つに長距離フェリーの活用があるらしい。
 長時間の継続運転をせずに荷物を遠隔地まで運ぶ方法として、既にかなり利用されているのだろう。確かに、乗船時のフェリーには大型貨物トラックが次々と吸い込まれていた。下船時には、入浴用具を抱えて車に戻っていくトラック運転手が大勢いた。また、数多く積み込まれたコンテナを到着港で受け取って、以後はその土地の運転手が運転するという形もあるらしい。
 フェリーの旅は、日本の物流業界の2024年問題というものを初めて身近に知る機会となった。(楠瀬明子)

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