休みの日にご飯を作っていたら熱気で汗が出てきたので、手ぬぐいでねじり鉢巻きをした。ふと、娘がまだ高校生だった頃を思い出した。
 その時も鉢巻き姿で何かの料理をしていた。娘の友達が遊びに来て何やら楽しそうに駄弁(だべ)っていたが、後で聞いたら僕の鉢巻き姿が「アニメの人みたい」と大受けだったらしい。
 なんのアニメか知らないが、鉢巻きで僕の記憶にあるのは赤塚不二夫の「バカボンのパパ」ぐらいか。時代が違うから他のキャラだろう。
 ま、それはともかく、料理中の汗はかなり気を付けている。飯屋で働いていた頃はもちろんだが、家庭でも汗入りの料理なぞ食べさせたくない。
 汗入りの料理といえば、そんなシチュエーションの漫画があったのを思い出した。本のタイトルも、どうしてそういったことになったかのストーリーも覚えていない。なんらかの料理対決で、小舟に乗って「潮(うしお)汁」を作るのだが、緊張のためか汗が流れ、鍋にぽたりと1滴。料理を見ていた審査員が、調味料のさじ加減で塩っけがほんの少し足りないと思う。しかし実際にいただくとちょうどよい塩梅(あんばい)であった。振り返ってみて「ああ、あの時の汗か」となるわけだが、当時まだ若かった頃は面白いな、と思っていたのだろう。あまり気にもならなかった。
 今考えてみて、汗の1滴で味が変わり、それを感じとる舌の持ち主というのも漫画だからとはいえ、汗入りの料理というのは首をひねる。
 一時期スウェットバンドやタオルを巻いていたが、スウェットバンドは調整が利かないので難しく、洋タオルは厚すぎて使いづらい。結局手ぬぐいをねじって使うのがちょうどいいようだ。具合のいい幅に折って使ってもいいが、何だか応援団みたいだし、ねじり鉢巻きがおっちゃんにはお似合いだろう。
 年を取ってきたせいか、とにかく汗っかきになってしまった。暑い時期はねじり鉢巻きが必需品だ。(徳永憲治)

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