旅は道連れ、世は情け。今、壮大な修学旅行中だ。もちろん1人ではない。生まれた時代も育った環境も異なる日本人の9人の大人が何の縁か、古き良き米国の象徴とも言えるルート66を疾走している。13日にシカゴに集結したわれわれは15日にシカゴを出発して、29日には旅を終えねばならない。終点はサンタモニカ、海の向こうから日本がほほ笑んでいる。
 運命か宿命か、人は人と出会い、別れ、また出会う。人生という長い道のりで出会った人たちはパズルのピースだ。人は生きている間にさまざまな形や大きさのピースを拾い集めていくが、ある瞬間、急に頭の中でパズルの完成イメージが浮かび上がる。それが創造の第一歩となる。そして、それを形にしようとする情熱と野望が推進力を生み出し不可能を可能にする。無謀は冒険。リスクなしの挑戦に成功はない。
 しかし、こんな大それたことは1人では成し遂げることはできない。ちんどん屋という日本の文化と笑顔を広めたい主人公たち、ルート66をこよなく愛する男、映画を作りたい監督、米国で挑戦するカメラマン、大陸を横断したい運転手、子どもの頃からロックバンドの米国ツアーに憧れた筆者。そんな大きな大人たちの夢がルート66に集結した。
 今回のプロジェクトは、そんな仲間たちとの出会いから生まれた。僕のパズルの絵は、ちんどん屋が日本文化の種をまきながら、内陸の壮大な一本道「ルート66」を練り歩くというものだった。そして、3年後にやってくるルート66の100年祭に向けて、米国の歴史と文化を日本人がドキュメントする。
 正直を言うと内陸の人たちは保守的だというイメージが以前はあったが、ルート66の沿道の人たちも世界中から来ている旅行者たちも笑顔と優しさにあふれている。「ルート66で出会ったらみんな家族だ」と言って、初めて会う僕たちをハグしてくれる。
 旅は終盤を迎えて残りわずか。しかし、終着点の向こうには明るい未来という新しい道が続くはず。大人の修学旅行はまだまだ終わらない。(河野 洋)

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