一緒に働く上司が変わり気持ちが楽になった。ようやく自分にできることや得意なことに自然体で取り組めるようになってきたと思う。
 この1年はとても大変だった。上に立つ人の影響力の大きさ、問題に手を打てない無力感を味わった。前途有望な先輩たちは長いキャリアを捨てて新たな道に進む決意をした。よく眠れなくなり、うつのようになったと話していた。私もそうだった。
 この平穏がいつまで続くか分からないけれど、少なくとも今は平常心で働けるというシンプルな幸せをかみ締めている。
 この静けさと平常心はニュースの仕事に役立っていると思う。パレスチナ・ガザ地区のニュースを担当すると、生きるか死ぬかの人々や生存を祈る家族たちを見て感情移入しそうになる。しかし、感情移入をして心をすり減らすのはよくない。私にできることは与えられた仕事をすることだと割り切ることで、できるだけ早く世界に発信することができるし、日本も注目しているのだと伝えることができる。
 ほんの少しでも人や社会のためになりたいという気持ちは変わらない。ロシアによるウクライナ侵攻、中国・香港・台湾情勢。どんなニュースであろうと、私はコーヒーを飲みながら平和な環境で制作を進めている。昔は置かれているギャップの大きさに動揺することもあったけれど、これはどうしようもないことだと思うようになった。
 自分にできることをして自らの役割を果たす。このミッションを遂行するために今回の人生を生きているのかもしれない。人や社会に役立つことをする。これはニュースの仕事をするだけではないと思う。もっと身近なこと、つまり、私や同僚が働く環境を良くしていくこともその一つだと思う。
 身近な人がパワハラで苦しんでいても見て見ぬふりをする人たちは多い。関わることで自分の出世や仕事に影響するからだ。外の世界には関心を寄せ、身近な問題には目を向けない。ニュースの現場で働いている人たちの現実は実に皮肉で偽善に満ちていると思うことがある。自分はどうありたいか改めて考えたいと思う今日この頃である。(中西奈緒)

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