「いただきます」という感謝の心が幸福感を招く

 再びホリデーシーズンがやってきた。 いい時期だが、この季節に悲しさ、不安、うつを感じる人も多い。だがハーバード大医学部の研究によれば、落ち込みがちな気分を高めることができる方法があり、しかもそれは「ホリデー」に組み込まれているという。それは「感謝」だ。
 同大のヘルスレポートによれば、感謝とは①あなたの人生に「いいこと」が起こり、➁それが 他の人々(または何かを信じている場合はその力)の助けによって起きたことを認識した際に生じる肯定的な感情だ。「ポジティブ心理学」の研究によれば、感謝は一貫して幸福感と強く関連している。

ジュッド・マツナガ氏

 感謝のおかげで人々はより前向きな感情を感じ、良い経験を楽しむことができ、健康を改善し、逆境に対処し、強い人間関係を築くことができる。要するに、カリフォルニア大学デービス校のロバート・エモンズ博士が述べているように、「いいことの源の一部は自分の外にある」のである。このエモンズ博士とマイアミ大学のマイク・マカロウ博士による2003年の研究「祝福と重荷を計る(Counting Blessings Versus Burdens)」は、その後の感謝に関する多くの研究の場を作った。自分の持っているものをありがたいと思う「感謝」は、幸せを感じるまで常に新しいものを求め続けたり、物質的な満足が満たされなければ幸せになれないという考えと対極に位置することがこの研究により分かった。
 被験者を三つのグループに分け、過去1週間に起こった出来事について、一つ目のグループは「感謝している事柄」を、二つ目のグループは「困ったことや不快だった事柄」を、三つ目のグループは良し悪しに関わらず「何らかの影響を受けた出来事」を書いてもらった。これを続けて10週間後、感謝について書いた人たちはより楽観的で、人生について良い気分になった。驚くべきことに、彼らはまた、悩みに焦点を当てた人たちよりも運動量が多く、医療機関を訪れた回数も少なかった。
 つまり研究は、「もしもっと幸せになりたいなら『感謝日記』を付ければ良い」と提案している。そうすることで感謝の気持ちを持ち、「授かりもの」を「当たり前」にしないで済むようになる。大げさに「感謝日記」と銘打たなくても、定期的な間隔で、大きなことでも小さなことでもいいので何か感謝していることを五つ以上、どこかに書き留めるのでもいいと言う。
 例えば、心温まる会話、友人や家族から温かい言葉を受け取った、気に入った本がある、美しい景色を眺めた、難しいゲームでがんばった、知らない人から親切な声をかけられた、仕事での出来事、手に入れた大切な物のこと…などが挙げられる。できるだけ具体的に書くようにし、それぞれの出来事が自分にとってどんな意味があったかを思い出して、その時の感情を再び味わう。同じことを何度も書くことになるかもしれないが、それはそれで良く、感謝リストを新鮮に保つことが大事。心理学者は、かつては毎日感謝することを推奨していたが、最近の研究はむしろ週に1度程度がより効果的かもしれないと示唆している。少し間隔を開けた方が、より魅力的に感じられるということかもしれない。「感謝の練習」は、最初は人為的に感じられるかもしれないが、続けることで精神状態はより強くなることができる。
 フィラデルフィアの心理学者グレッチェン・シュメルザー氏は、「感謝によってわれわれは持っているものを見つめ、豊かさを感じることができる」と述べている。彼女はハイキングの事故で両脚を骨折した後、ネガティブな思考に陥るのを避けるために「感謝の練習」を活用した。回復するまで6週間の車椅子生活中、彼女は毎日自分に「できることに感謝し、できないことに焦点を当てないように」と言い聞かせたそうだ。
 日記が肌に合わないなら他の方法を見つけることもできる。研究によれば、感謝は書き留める代わりに声に出したり、黙って考えたりすることもできる。また、祈りを使うこともできる。感謝の表現はどんな形で取り入れても良い。重要なのは、それを習慣にすることだ。
 ところで、世の中には「不幸を気にしない」というタイプの人もいるかもしれない。そこで、「感謝すること」は肉体と精神の健康にも効用があることを伝えたい。
22年に行われた65歳以上を対象にした調査研究では、感謝する度合いが高い人ほど認知機能に優れ、感情と記憶を処理する脳の領域が大きかったと報告されている。不安やうつ症状といった心理的な苦痛への対処に、感謝を育むことが役立つかもしれないともいわれている。また、他の研究は感謝を表すことでいかに人間関係の改善が望めるかを調査している。カップルを対象としたある研究では、日頃パートナーに感謝の言葉を伝えているカップルは相手に対する肯定的な感情が高まるだけでなく、互いの関係についての心配ごとを口にしやすくなることが示された。
 さらに、日常生活で感謝を表す人ほどよく眠れ、うつのレベルが低いことが研究で示されている。感謝は高血圧予防や心臓などを含む体の健康にも関連していることが報告されている。(②に続く)

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