

人形作家・小柳喜美子さんの個展が始まった。「エレガンス・アンド・エモーション」と題した個展は日本美術史家のミーハー・マッカーサーさんがキュレートし、独特の特徴を持つ小柳さんの人形14体の他、制作に使用する道具、独自の技法を紹介する資料や写真などが展示されている。
小柳さんは1932年、東京の老舗人形工房「村岡」の家に8人きょうだいの1人として生まれた。母は2代目人形師、父は人形のガラス目を作る専門家で、幼い頃から人形作りを学んだが、日本人形を伝承する家業とは異なり独自の人形創作を目指すようになる。66年に日系カナダ人の夫と共にカナダのオンタリオ州に移住し、子育てをしながら制作を続け、最終的には東京、カナダ、米国、メキシコで個展やグループ展に作品を出展。現在はロサンゼルスに住み、92歳になろうとする今も美しい人形を作り続けている。

小柳さんの人形は伝統的な日本人形の姿形と大きく異なっている。背が高くほっそりしたフォルムは優雅さと静けさを感じさせるが、その顔の表情や、時には首の傾きさえも、表面の下にある強い感情と深い哲学的コンセプトを示唆している。人形の多くは黒を身に着けているが、これは小柳自身の個人的なスタイルと美学を反映している。
「これまでほとんどの美術史家は人形を純粋芸術とはみなしていないように感じており、私もつい最近までその1人だった」とマッカーサーさんは言う。「だが小柳さんの作品を見たら考えが変わる。美しい人形を作る際にも、美しい絵画と同じような原理が働いている。強い構図、美しい線、そして豊かで深く動きのある色彩が必要だが、小柳作品にはそれら全てが見られる。人形も芸術であることがよく分かった。小柳さんからインスピレーションを受けたと言わざるを得ない」と話し、小柳さんの作品の魅力をたたえた。

人形制作は材料との真剣な対話の上に進み、完成までに長い日数を要する。家族に伝わる日本伝統の職人技に根差しているが、温度や湿度が大きく違う海外の環境でも人形の命が長く保てるよう、50年以上カナダに住んでいる間に改良して独自の技巧を身に付けた。針金で作った芯の周りに、のり、コットンパルプ、細かく粉砕した桐の木くずを混ぜて大まかな未完成の形を成形する。作品が乾燥して固まった後、人形を繊細に彫刻し、研磨して最終的な形を作る。次に表面仕上げとして胡粉と呼ばれる貝殻の粉末から作られた白い顔料を何層にも塗布し、最終的には胡粉と水彩顔料を混ぜたもので彩色する。唯一無二の小柳さん独自の技法。全部で少なくとも2カ月以上の工程だという。
小柳さんの人形は角度やあるいは見る人の気持ちによって、さまざまな表情を見せる。ひな人形や五月人形のように何かの象徴として飾られる人形とは異なり、まるで見る人の心を写す鏡のようだ。

カナダから息子家族のいるロサンゼルスに移住したのがコロナ禍直前の2019年。新天地ロサンゼルスで初めての個展となった。「92歳になりますが、まだ命の限り作品を作り続けたい」と話す小柳さんの目は、強い光を宿している。
展示は国際交流基金ロサンゼルス日本文化センターの支援によって実現した。5月5日まで。会場はパサデナの秀明アメリカホールギャラリー(240 E. Colorado Blvd.)。開館時間は月〜土曜日、午前9時半から午後5時半まで。詳細はEメール—
info@shumeiarts.org
または電話626・584・8841。
