パリ五輪の熱狂に酔い、他のスポーツを見ることがおろそかになった人も多いことだろう。私もその1人で、五輪開幕前までは大谷の活躍に熱中していたが、五輪中は後回しとなり、結果のみ確認する日々が続いた。
この夏、大谷は調子が上がらず心配していたが、先週、「40本塁打、40盗塁」を成し遂げた。大リーグ史上6人目という偉業は「40―40」と表現され、前人未到の「50―50」、さらには三冠王も狙える位置に付け、27日時点で本塁打は2本差の首位、打点は4点差の2位、打率は5位で、夢は膨らむばかり。
「40―40」に王手をかけた試合を見に行った私は、大記録達成の目撃者になる幸運に恵まれた。四回に40盗塁を決め、記録へあと1本に迫った。3―3の同点で迎えた九回裏2死満塁で、大歓声に包まれ打席に向かったのは大谷だった。低めに入った初球を軽い感じで振り抜くと、打球はセンターの柵を越えた。記録達成はソロでもよかったが、まさか満塁サヨナラホームランとは劇的過ぎた。先に40号を打ってからの40盗塁での記録達成なら、盛り上がりに欠けたことだろう。このクライマックスは野球の神様が演出し千両役者、大谷のために地元の舞台を整えたに違いない。ドラマチックと表現されたが、ドラマを見ているようだった。
会場からは「MVP」の連呼が鳴り響いた。大谷は指名打者なので守備に就かず、打撃のみの評価はMVP争いで不利とされるが、ライバルたちの打撃の成績と比較すると勝っており十分に狙えるものと信じたい。
投打の「二刀流」で鳴らしてきた大谷。今季は昨年受けた右ひじ手術の影響で打者に専念。3月からキャッチボールをしてきのは、来季を目指してのことだと理解していた。だが先週、手術以来、初めてブルペンに入り数球投げたことで私の考えは変わった。大谷は球界の常識を幾度も覆してきた男。今季終盤にマウンドに上がってもおかしくはない。二刀流の復帰は来季でもいいから今季は無理をせずチームの優勝と「50―50」、三冠王を目指してもらいたいと思う半面、欲を言えば投げる姿も見てみたい。大谷劇場は、まだまだ続きそうだ。(永田 潤)
